復元宇都宮城について [城郭よもやま話]
宇都宮城は、戊辰戦争で激しい戦闘のため灰燼に帰し、
その後の富国強兵と文明開化という名の乱開発政策によって遺構の大半は消滅、
さらに太平洋戦争後には、わずかに残った堀などの遺構もつぶされてしまい、
完全に遺構は消滅、幻の名城となってしまった。
その宇都宮城が、数年前に本丸の一部である土塁と水堀と櫓が復元されたのは、
御存知の方も多いと思う。
ところがその復元たるや、
櫓こそ形状は残された資料を基に検討され、木造で復元されたが、
なんと土塁は鉄筋コンクリートで構築した上に土をかぶせただけ。
したがって城好きの方の間ではすこぶる不評で、
私自身、宇都宮市民の恥だと思っていたほどである。
ところが、今月の宇都宮市の広報誌を見て、
自分の不明を思い知らされた。
というのは、どうも現在の建築基準法では、
新たに作った土塁上には櫓などの建築物を建てられないという事情があったらしいのだ。
たしかに復元土塁の上に櫓や天守を復元した事例は聞いたことがない。
(そんな事例を御存知の方がいればご教示を請う。
でも建築確認申請なんて、その地域の所管土木事務所の見解で変わってしまうので、
宇都宮で適用できるとは限らない。
あっ今は土木事務所じゃなくて市役所か。)
またどうしても硬い安定した土塁の上に櫓を復元したいと思ったとしても、
かつての工法である版築で硬い土塁を築こうと思ったら、
かなりの時間とお金をかけざるを得ないだろうし、
できる職人はほとんどいないだろう。
職人がいないということは、工事を受注する業者がいないということである。
工事が受注してもらえなければ、復元もクソもない。
工事が全然始められないのである。
そんな事情も知らず、「宇都宮市民の恥」とは誠に失礼しました。
復元に携わった宇都宮市役所の関係者の方にお詫びします。
そんなわけで、城好きの皆さんも復元宇都宮城のコンクリート土塁は
大目に見てくださいね。
↓宇都宮市の広報誌、36ページに記載があります。
http://www.city.utsunomiya.tochigi.jp/koho/kohoutsunomiya/011260.html
そんな事情があったとは知りませんでした。土塁はムリなんですね・・・
昔を復元してくれるその心意気だけで、それがしはうれしいですが。
批判しても元の姿に戻るわけではないですもんね。
by ノリパ (2009-02-12 18:22)
建築設計で言うところの基礎強度の問題なんだと思います。
土地を平らに造成して、基礎の地質改良をするなら普通ですが、
土塁を盛り上げてというのは前例がないので、
建築確認申請の担当者も「うーん」といったところなんだと思います。
ただでさえ耐震偽装で、たたかれた申請手続きなので。
by アテンザ23Z (2009-02-12 19:54)