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ティーレマン/ミュンヘン・フィル来日コンサート2010 [クラシック音楽]

今日、みなとみらいホールでティーレマン指揮ミュンヘン・フィルの来日コンサートがあった。
ティーレマンは今年でミュンヘン・フィルの音楽監督を退任するので、
この組合せは今回が最後かもしれない。
曲目は、Brucknerの交響曲第8番。大曲である。

ティーレマンは最近の指揮者としては珍しく、ハース版を使用している。
大抵はノヴァーク版を使用する指揮者が多く、
ハース版は昔のシューリヒトとカラヤンのCDしか私は聞いたことが無い。
ティーレマンがハース版を使用しているのは、カラヤンの影響かもしれない。

ティーレマンの指揮は、比較的インテンポに近いが、
コーダの最終部など要所でテンポを揺らしている。
しかし第2楽章のスケルツォだけは、かなりテンポの変動幅が大きい。
またある箇所ではチェリビダッケの解釈の余韻も感じられた。
80分を越える大曲があっという間に終わってしまったように感じた素晴らしい演奏だったが、
中でも圧巻なのは第3楽章だった。
Brucknerの緩徐楽章の中でも1、2を争う美しい曲だが、
ミュンヘン・フィルの弦の豊かな音と木管の美しさが相俟って、
時間を忘れるような素晴らしい演奏だった。

また、Brucknerで重要なティンパニであるが、これも見事な演奏で、
演奏後の拍手では、ティンパニ奏者が立ち上がったとき、拍手万雷であった。

みなとみらいホールの音であるが、サントリーホールのような余韻を残すような豊かな残響は無い。
ほかのホールの音をあまり知らないので、
良し悪しがよくわからないが、多分それほど悪くは無いのだろう。
ただ、オケ全体がこんもりした音になってしまっている印象があり、
各パートの音の分離はあまり明確ではないようだ。

ところでこの曲ではシンバルとトライアングルが奏されるが、
それは第3楽章のクライマックスだけで、
特にシンバルの出番は2回しかない。
その出番以外は演奏者はずーっと待っているしかなく、
しかもクライマックスに2発しか打たないので、
絶対に失敗が許されない。
演奏者にものすごい負担を掛ける曲だと思った。

演奏会の空席はまばらで、
わざわざBrucknerを聴きに横浜まで来ているだけあって、
サントリーホールよりも聴衆はかなりクラシックを聞き込んでいる人ばかりに感じられた。
オケ編成が大きい曲で、サントリーホールの舞台に収まりきらないので、
より広いみなとみらいホールに会場を設定したのではないかと思う。

しかしこのホール、入場もパンフ購入もすごい行列で、
サントリーホールのように開幕までゆっくりする時間が取れなかった。
サントリーホールよりも収容人員が多いからであろうか。
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ジンジャーエール

おっしゃるとおり、印象的な演奏会でしたね。
とくに3,4楽章に進むにつれて、ティーレマンの持ち味である、より「ワーグナー」の響きに近い音楽づくりが効いてきたように感じました。
舞台では弦楽器群が「対向配置」でしたが……とりわけコントラバスをさらに高いひな壇に上げていましたね。低弦のパッセージにすごく意味を感じる演奏でした。
終演後に、コンマスに続いて、真っ先にコントラバス主席と握手を交わしていたのが印象的でした。陰のコンサートマスターだったのかもしれませんね。
「みなとみらい」の響きに関して――私見ですが、1階でお聴きになるのであれば、できれば真ん中の通路より前方のほうが、残響もあり、響きにも明瞭さがあります。
最近のシューボックス型のホールの問題点だと思うのですが、舞台の周辺に響きが回ってこもりがちで、離れた後方席では音量が不足するきらいがあります。かつて、ベルリンのフィルハーモニーがカラヤン時代に、同様の大改修をした話を聞いたものですが――舞台上に反射板を設置して、後方に音が回る工夫をしてもらいたいなぁ…と常々感じています。
以上、生意気ながら。
by ジンジャーエール (2010-03-29 07:41) 

アテンザ23Z

>ジンジャーエールさん
当ブログに訪問下さりありがとうございます。
オケの配置、そうでしたね。
第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンを対向配置にするのは、
古典派などではありがちですが、
後期ロマン派のブルックナーでは珍しいのでは?
コントラバス主席との握手は、
てっきり特別親しい仲間なのかと思いましたが、
そういう見方もありますね。
音響については、私も反射板設置の意見に賛成です。
フィルハーモニーも10年ぐらいかけて調整したと言いますよね。
一度、本場ヨーロッパのコンサートホールでも
音の違いを聴いてみたいです。
by アテンザ23Z (2010-03-29 20:17) 

ヤマゲン

自分は初めてブルックナーの8番をライヴで聴きましたが、本当に圧倒されました。三楽章の粘りと深み、終楽章のパワー、このような演奏やはり日本のオケびいきの自分でも難しいと感じました。
あと自分はこのホールの一階中ほどの左側で聴きましたが、この演奏にはとてもあっていたと思います。個人的には東京交響楽団の川崎定期会員に
なっているほど川崎ミューザが一番好きなホールですが、おそらくこの演奏やられたらホールの一部が共振してしまったかもしれません。
ブルックナーの第五の初ライヴもやはりティーレマンのミュンヘン・フィル
の素晴らしい演奏でした。このコンビのおかげでブルックナーが好きになったようなものです。ちなみに自分はオーディオも好きで、行く前に
ハース版を使ったハイティンク・コンセルトヘボウ81年録音を聴きましたが、
今回ほどライヴの凄さを見せ付けられたことはありませんでした。
ティーレマンの今後に大いに期待したいと思います。
by ヤマゲン (2010-03-30 12:21) 

アテンザ23Z

>ヤマゲンさん
当ブログに訪問下さりありがとうございます。
実は私も8番のライブは初めてです。
ブルックナーの交響曲として考えても、昨秋のムーティの2番以来で、
まだ2度目でしかありません。
ライブで聴く圧倒的な音の迫力はすごいですね。
これで9番の第3楽章なんて聴いたらと思うと、
想像するだけですごそうです。
ホールの話は非常に参考になります。
今度ミューザのコンサートにも行く機会を作って見たいと思います。
ハイティンクはハース版を使っていましたか。知りませんでした。
私個人としては、ノヴァーク版よりハース版の方が
楽想の繋がりが自然に思えて好きです。
by アテンザ23Z (2010-03-31 12:23) 

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