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前橋城(群馬県前橋市) [古城めぐり(群馬)]

DSC02861.JPG←本丸の土塁
 前橋城は、室町・戦国時代には厩橋城と言い、戦国後期に上杉・北条・武田という三大強国の係争地帯となった上州の動乱の中心にあり続けた城である。

 蒼海城主総社長尾忠房は新たに石倉城を築いたが、利根川の氾濫により押し崩され、後に箕輪城主長野氏の一族、長野賢忠が崩れ残った残片を頼りに新城を築いたのが、厩橋城であると言う。以後、箕輪城の支城として機能したが、1551年に関東管領山内上杉憲政が小田原の北条氏康の圧迫を受けて越後に亡命すると、賢忠の子道安は北条氏に従い、北条氏家臣の福島頼季・師岡山城守らが進駐した。1560年、上杉謙信が越山して関東に進出すると、厩橋城の長野氏はこれに呼応し、謙信は厩橋城に本陣を置いて関東経略の前線拠点とした。関東管領職を譲り受けた謙信は、以後1578年に急死するまでの18年間に、厩橋城を前進基地として13回とも言われる関東出陣を行った。厩橋城代には、1563年に北条(きたじょう)高広を任命し、以後北条氏が厩橋を支配した。1578年に謙信が死去すると、後継を巡って御館の乱が勃発し、北条高広とその子景広は北条氏康の子で謙信の養子となっていた上杉三郎景虎に与した。しかし景勝方に敗れて景広は討死し、主君景虎は鮫ヶ尾城で自刃し、主家を失った高広は武田勝頼に従った。勝頼は、厩橋城を足掛かりに東上州に侵攻して膳城を陥とし、城主河田備前守を討ち取った。1582年に勝頼が織田信長に滅ぼされると、織田信長の武将・滝川一益が関東管領として厩橋城主となった。しかしそのわずか3ヵ月後に信長が本能寺の変で倒れると、北条氏直は神流川の合戦で滝川一益を破ってこれを追い落とし、厩橋城は北条氏の支配下に入った。1590年の小田原の役では、北国勢に攻められて落城し、北条氏が滅んで関東に入部した徳川家康は、譜代の平岩親吉を厩橋城に封じた。関ヶ原合戦後は酒井重忠が厩橋城に入部した。

 徳川家の譜代の重臣酒井氏は、9代150年にわたって北関東の要である前橋城を支配した。この間に城は大改修されて近世城郭に生まれ変わり、名も厩橋城から前橋城と改められた。1749年に酒井氏は姫路城に移封となり、徳川家康の次男結城秀康の後裔松平朝矩が前橋城に入った。しかし前橋城は利根川による侵食が甚だしく、1767年に朝矩は川越城に移り、前橋城は取り壊されて陣屋となった。幕末になると不穏な国情から前橋城再築の必要が生じ、1863年に着工され、3年8ヵ月後の1867年に完成した。再築された前橋城は、旧三ノ丸を本丸とした渦郭式の縄張で、細部には西洋式の稜堡様式を取り入れた。城を取り巻く土塁の要所に砲台を設け、火砲の射程に合わせて「折」を延ばし、丸馬出しは規模を拡大し、大手の角馬出しは五稜郭のものに近似した構造とした。しかし完成を急いだ為、城門や建物は簡素なものだったと言う。そしてこのまま明治維新を迎えることとなった。

 このような複雑な歴史を持つ前橋城は、明治以降の市街化で本丸以外の遺構は壊滅してしまっている。現在本丸跡には群馬県庁が置かれ、その周囲には土塁だけがかつての雄姿を残している。この土塁は折れの部分の形状が角張っているが、これは幕末に改修された新しい土塁だからなのであろう。その他では本丸東側の大通り沿いに、前橋新城の車橋門の渡櫓の石垣がわずかに残っているのみである。本丸土塁が残っているだけ宇都宮城よりマシとは言うものの、かつて関東7名城の一に数えられた堂々たる城は、残念なことに時の彼方に消えてしまっている。
車橋門跡の石垣→DSC02886.JPG

 お城評価(満点=五つ星):☆☆
 場所:https://maps.gsi.go.jp/#16/36.390698/139.060682/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1j0h0k0l0u0t0z0r0s0f0


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タグ:近世平城
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☆はな

知っているお城だ^^。
涼しくなったので お城巡りしたいと
アテンザ23Z さんの記事巡りさせていただいてます。

by ☆はな (2010-10-07 09:03) 

アテンザ23Z

>☆はなさん
いつも拙文をご覧頂きありがとうございます。
だいぶ涼しくなってきたので、城巡りにはいい気候になってきましたね。
そしてもう少しすれば、落葉と共にクモの巣が振り払われて、
待望の山城シーズンに突入です!
by アテンザ23Z (2010-10-08 00:04) 

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