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浦賀城(神奈川県横須賀市) [古城めぐり(神奈川)]

DSC02802.JPG←東林寺出丸南端の大堀切
 浦賀城は、三崎城と並ぶ小田原北条氏配下の三浦水軍の拠点である。築城の時期ははっきりしないが、元々の創築は三浦道寸によると考えられている。三浦氏滅亡後、北条氏の支配するところとなり、北条氏3代氏康が安房里見氏の里見水軍に備えると同時に安房侵攻の足掛かりにするため、三崎城の出城として大々的に整備したと推測される。「北条氏所領役帳」に拠れば、浦賀定海賊として佐原の愛洲兵部少輔及び三浦和田の高尾氏の名があり、玉縄衆麾下に属していた。以後、里見氏に対峙する一大水軍拠点として重視されたが、1590年に北条氏が滅亡すると廃城となった。

 浦賀城は、浦賀港東岸の比高50mの明神山一帯に築かれた城である。一般的には明神山山頂の楕円形の曲輪が主郭とされている。内部は3段の平場に分かれ、周囲には土塁らしき跡があり、西側に腰曲輪を伴っている。この郭の北側は15m程の高低差を下って、井戸曲輪となっている。井戸曲輪は北側の尾根筋に対する堀切も兼ねており、尾根の南北を分断する役割を持っている。この井戸曲輪の北を登っていくと、東林寺出丸と一部で呼称される曲輪群がある。即ち浦賀城は、空堀状の井戸曲輪によって南北に城域が分かれた、北条では珍しい一城別郭の縄張りとなっている。東林寺出丸は南端に大きな土塁と箱堀状の大堀切を設けている。この堀切の西側は搦手口につながっている様で、搦手道に沿って左右に段曲輪が配置されている。東林寺出丸はやや不整形な外形の曲輪で、3~4段の平場に分かれている。この更に北側は藪がひどく未確認である。一方、東林寺出丸の東側には尾根が張り出しており、明らかに東方への物見台となっていて、腰曲輪まで付随している。また東林寺出丸では腰曲輪は東側に集中しており、東方の房総半島(里見氏)を警戒する姿勢が顕著である。

 浦賀城の主要な構造は以上の通りであるが、明らかに北側の東林寺出丸の方が防備が厳重で、その厳重さから考えて主郭は北側の曲輪群ではないかと思う。元々三浦氏が創築した当初は明神山の曲輪だけで構成され、ここが主郭であったものを、北条氏の時代に更に北側に城域を拡張し、主郭を北に移したのではないかと個人的に想像している。そうだとすれば、明神山の曲輪は二ノ郭兼物見曲輪に当たるのだろう。この他、浦賀城では、主郭・ニノ郭それぞれから井戸曲輪に繋がる動線は、虎口を屈曲させて更に横矢張出しを設ける北条流の技巧さが見られる。浦賀城は他の北条の城ではあまり見られない独特の縄張りがほぼ完存しており素晴らしい。少々甘いが、北条系城郭としての縄張りの希少性から4つ星評価にしたい。
堀切を兼ねた井戸曲輪→DSC02792.JPG
DSC02840.JPG←東林寺出丸(主郭?)
明神山曲輪(ニノ郭?)の虎口→DSC02777.JPG

 お城評価(満点=五つ星):☆☆☆☆
 場所:http://maps.gsi.go.jp/#16/35.243370/139.723277/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1j0h0k0l0u0t0z0r0s0f1
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山村刑事

こんばんは、先日教えて頂いた玉縄城の搦手おかげさまで竪堀の上の所で無事発見出来ました、こちらを見なければ間違いなく見る事が出来なかったはずです、本当にありがとうございました!!女子高の建物から見えなければ柵沿い辺りをもう少し散策したかったんですが、、
浦賀城ですがどう考えても自分も東林寺出丸とされる辺りが主郭だと思います、明神山こそが出丸な気がします、東林寺出丸?から浦賀駅方面に行くと土橋状の小道が有る大きな堀切りも有りその向こうにも大きな郭が有りました、もしまた機会が有りましたら行ってみてください。
浦賀城はそれなりに遺構が有る割には全く整備される事も、注目される事も無いないのが残念ですね。
また何か有りましたら教えてください。
by 山村刑事 (2013-11-03 18:20) 

アテンザ23Z

>山村刑事さん
玉縄城の件、お役に立てて光栄です。
現存遺構がほとんど知られていないのが残念ですが、
近隣住民の意向もあるのかもしれませんね。

浦賀城も明神山以外の遺構があまり知られていませんね。
東林寺出丸?の先は薮がひどそうだったので行かなかったのですが、
頑張って行っておけばよかったです。
再訪必要ですね。

by アテンザ23Z (2013-11-06 19:14) 

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