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三岳城(静岡県浜松市北区) [古城めぐり(静岡)]

DSC06338.JPG←一ノ城の枡形の石垣
 三岳城は、南北朝時代に遠江南朝方の柱石であった井伊氏の本城である。井伊道政が、後醍醐天皇の皇子宗良親王をこの城に奉じて立て籠もり、南に鴨江城、北に田沢城、西に千頭峯城、東に大平城と、三岳城を中心として周囲に城砦群を築いて北朝の足利方に抵抗した。1338年秋にこの城に入った宗良親王の歌集『李花集』にも「井伊城」としてその名が見え、遠江南朝方の中心拠点であった。この頃の南朝方は、抗争の初期段階で討死した三木一草(楠木正成、名和長年〔伯耆〕、結城親光、千種忠顕)の他に、更に反転攻勢の中心と成るべき新田義貞、北畠顕家をも失っており、各地の南朝勢力の再建が急務であった。その為、吉野の後醍醐天皇は各地に皇子を下向させて、再建の中心を担わせることとした。宗良親王の遠江入りもその一環で、本来は伊勢より出港して奥州を目指したが、途中暴風で船が座礁して遠江に漂着し、井伊道政を頼ったものである。1339年、北朝の将軍足利尊氏は高一族や足利一門の武将を下向させて井伊氏を討伐し、翌40年正月、高師泰、仁木義長らの大軍による攻撃によって、周辺諸城と共に三岳城も落城した。この後、遠江の最後の拠点大平城も落とされ、遠江の足場を失った宗良親王は、駿河の安倍城に逃れた。その後三岳城はしばらく歴史の表舞台から姿を消すが、戦国時代に入ると、元遠江守護であった斯波義達が、井伊谷に入って反今川の兵を挙げ、曳馬城の大河内貞綱と共に井伊氏も斯波氏に与して三岳城に立て籠もった。今川氏親は、刑部城堀川城に伊達忠宗を入れて前進基地とし、1513年に掛川城主朝比奈泰以を主力とする今川勢の総攻撃によって落城した。

 三岳城は、井伊谷の北東にそびえる標高466.8mの三岳山に築かれた山城である。大きく3つの城域に分かれ、山腹の三岳神社周辺の三ノ城(出城)と、山頂の一ノ城、その東の尾根に位置する二ノ城で構成されている。特に一ノ城と二ノ城は尾根続きとは言うものの独立性が強く、それぞれが独立して機能する一城別郭構造となっている。その為、全体の規模も大きく、並の山城2つ分程の城域を有している。山頂へは三岳神社から登山道が整備されており、それを登ると一ノ城・二ノ城の間の尾根鞍部に到達する。

 東側の二ノ城は、主郭入口はS字状土橋が掛かった小堀切で防衛され、その先に櫓台状の土壇を備えた、削平のやや甘い主郭が構築され、主郭東側に続く一段低い二ノ郭の方が広く、削平もしっかりしている。主郭とニノ郭のほぼ全周が腰曲輪で囲繞されている。ニノ郭の東側には半円弧状の横堀があり、その先を下って行くと、大岩を利用した虎口の先に幅3m程の浅い堀切が穿たれている。その先にも、ほとんどわからない程度の小堀切があって城域が終わっている。また周囲の腰曲輪には、虎口部に石垣の残欠があり、一部の腰曲輪には下方の腰曲輪に対して横矢掛かりの櫓台も築かれている。二ノ城の解説板が設置されているのは西出丸で、主郭はかなり離れている。ニノ城は、横矢掛かりなどがあるものの普請が徹底されておらず、比較的古い形態をそのまま残している様である。

 次に西側山頂の一ノ城であるが、先ほど登り着いた尾根鞍部にわずかな小堀切があり、その上に枡形門跡とされる小平場があり、その先は長い登道となる。途中に数段の腰曲輪が備えられ、主郭手前にも薮ではっきりしないが、段曲輪が数段形成されている。石碑の建つ主郭は、眺望が素晴らしく、浜名湖や遠江の平野部全域をほぼ一望の下に収めることができる。主郭の西側には腰曲輪群が集中配置されている。前述の主郭東側の曲輪群は、あまりはっきりしないものであったが、西側のものは普請がしっかりしており、しかも下段の腰曲輪には土塁に石垣が残っている。中には枡形虎口を石垣で構築している部分もあり、この辺りは戦国期の遺構と思われる。

 三岳城は、全体的な普請は大規模とは言い難いが、二ノ城は東側に、一ノ城は西側に、多数の腰曲輪群と横堀・堀切等による重厚な防御線を張っている。南北朝期の山城にしては、横矢掛かりや石垣による枡形虎口などの縄張りが発達しており、戦国期にかなり改修を受けたらしく、ほとんど戦国時代の縄張りを残した城となっている。
ニノ城の堀切→DSC06171.JPG

 お城評価(満点=五つ星):☆☆☆
 場所:http://maps.gsi.go.jp/#16/34.852833/137.690953/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1j0l0u0t0z0r0f0
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