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旭山城(長野県長野市) [古城めぐり(長野)]

IMG_2558.JPG←大竪堀と両翼の腰曲輪群
 旭山城は、善光寺平に進出した武田信玄が築いた防衛拠点の山城である。元々この地には、善光寺別当の栗田氏の詰城があったものと推測されている。1553年の第1次川中島合戦で、占領して間もない北信濃を、進撃してきた上杉謙信(当時は長尾景虎)にあっという間に侵攻された信玄(当時は晴信)は、上杉勢の南下を阻止する防衛拠点として旭山城を構築した。そして1555年、栗田氏の内部分裂を利用して栗田鶴寿を調略し、善光寺平の南半分を武田氏の勢力下に置くと共に、栗田氏を旭山城に籠城させた。そして3000と言われる増援兵を旭山城に派遣して、上杉軍の侵攻に備えさせた。この動きに対し、謙信は4月に善光寺平奪回の為に出陣し、横山城に本陣を置いた。また信玄も旭山城の後詰として川中島へ出陣し、犀川を挟んで両軍は対峙した。謙信は、旭山城の動きを封殺するため、旭山城の目と鼻の先にある葛山城を整備・拡大して、落合備中守一族や小田切駿河守幸長らを籠らせた。その効果は絶大で、旭山城は動きを封じられ、旭山城・葛山城の対峙が両軍の作戦計画を大いに掣肘し、両軍共に膠着状態となって、200日に渡る長期対陣となった。この間、両軍共に兵站や士気の低下に苦しみ、駿河の今川義元の仲介で和睦した。この和睦は、武田方の旭山城の破却、上杉氏を頼った北信の国人衆の本領復帰など、特に兵糧確保に苦しんだ武田方に不利なものであったが、信玄はこれを守る気はなく、翌年から水面下で上杉方の切り崩しを図った。その上で1557年2月、雪で上杉勢が出陣できない時期を見計らい、信玄は馬場美濃守信房に命じて大軍で葛山城を急襲させた。武田勢は水の手を断ち、城に火をかけて落城させた。信玄の調停違反に激怒した謙信は、雪解けを待って善光寺平に進撃し、4月25日に破却された旭山城を再興して、ここに本陣を置いた。しかし甲越両軍の直接対決は見られず、謙信は9月に陣を払って帰国した(第3次川中島合戦)。その後の旭山城についての消息は伝わっていないが、第4次川中島合戦を通して武田方が善光寺平をほぼ手中に収めると、旭山城も再び武田氏の勢力下に入った。1564年の第5次川中島合戦では、上杉方の勢力圏は大きく北に後退しており、武田勢は善光寺平最北端の髻山城付近まで進出した。上杉方は、水内・高井両郡境から旭山方面に威力偵察を行った。しかしこの頃には、戦略拠点の主役は海津城長沼城に移っており、旭山城の戦略的重要性は既に薄れていたと思われる。1582年の織田信長による武田征伐でも旭山城・葛山城共に歴史に現れず、既に廃城になっていたものと思われる。

 旭山城は、信濃善光寺の西南西にそびえる標高785m、比高415mの峻険な旭山に築かれている。麓から歩いて登ったら大変な高さであるが、幸い南の中腹まで車道が延びているので、150m程の登りで済む。山頂の、低土塁で囲まれたほぼ方形の主郭を中心に、東と北に伸びる尾根に曲輪を配し、南西の尾根にも出曲輪を配している。主要な曲輪は堀切で分断され、竪堀も効果的に配されている。中でも主郭背後の堀切は、そのまま南北の斜面に大竪堀となって落ちており、南西面ではその大竪堀の両側に腰曲輪群を何段も配置して、竪堀を登ってくる敵兵を迎撃できるようにしている。そして、主郭を始め南西側の腰曲輪群、堀切を挟んだ南曲輪には石垣が築かれており、尾根続きの南側への防御を固めている。これらの石垣群は故意に崩された形跡が明瞭で、明らかに破却の跡を残している。腰曲輪の中に石列が残っている部分もある。東の尾根へは、3本の堀切を介して二ノ郭以下の曲輪が連なっており、先端は善光寺平を一望できる物見を兼ねた曲輪となっている。南西端の出曲輪にも櫓台が築かれている。主郭周りには何段も腰曲輪が築かれているので、石垣群と相まって防備は厳重である。葛山城などと比べると普通の規模の山城で、多数の兵を置けるほどの広さはないが、厳重な防御構造を備えた遺構が堪能できる。
主郭に残る石垣→IMG_2574.JPG
IMG_2475.JPG←南曲輪の石垣
 お城評価(満点=五つ星):☆☆☆☆
 場所:https://maps.gsi.go.jp/#16/36.654270/138.163118/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1j0l0u0f0


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