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冥護山楯(宮城県丸森町) [古城めぐり(宮城)]

IMG_1069.JPG←屈曲する大手道
 冥護山楯(冥護山館)は、明子山城とも記載され、戦国後期の伊具郡を巡る伊達・相馬両氏の抗争の中で伊達政宗が陣取りしたとされる陣城である。天文の乱で子の晴宗に敗れて丸森城に隠居していた伊達稙宗が、1565年に亡くなるとその女婿で稙宗の世話をしていた相馬氏が稙宗の隠居料であった丸森他5ヶ村(伊具郡)を占領したことが発端となり、伊達・相馬両氏はその後各3代20年に及ぶ長い抗争を行うこととなった。当初伊具郡を占拠した相馬氏は、伊具三城(小斎城金山城・丸森城)を押さえて伊具支配を固めていた。この時、冥護山楯は金山城と小斎城との中間に位置する重要な戦略陣地として相馬氏が築いたと推測されている。しかし1576年になると、伊達輝宗は矢ノ目に本陣を置いて伊具郡奪還に乗り出した。1581年には小斎城主佐藤為信が伊達氏の誘降に乗って相馬氏から離反し、続いて冥護山楯も金山城と共に伊達氏の掌中に帰した。その後、伊達成実が布陣した隣の西山楯と共に、政宗がこの冥護山楯に本陣を置いたと言われている。尚、この時相馬義胤は、陣林楯に本陣を置いて伊達勢と睨み合ったと伝えられている。1584年5月、田村清顕・岩城常隆・佐竹義重らの仲介で、伊達氏の優勢下で伊達・相馬両家の和睦が成立し、伊達氏による伊具郡奪還が果たされた。この和睦によって冥護山楯・西山楯はその戦略的意義を失い、その後使用されることなく廃城となった。

 冥護山楯は、標高80m程の丘陵上に築かれた城である。多重横堀と多重枡形を多用しており、伊達氏系山城の典型的な形態を示す。南の墓地裏に最初の虎口があり、そこから先の城内通路は全て堀底道となっている。この虎口も2つの堀状通路が並んでおり、前川本城の搦手虎口(外周部南西の入口)と似ている。2つの通路の内、向かって右側は途中で分岐しており、分岐の左は大手道だが、右は南東外周の横堀に繋がってしまっている。また左側通路は横堀外周の腰曲輪に繋がっており、囮虎口を兼ねていたと思われる。大手道を進んでいくと、目の前に櫓台がそびえ、堀状通路が屈曲しながらいくつにも分岐している。二ノ郭(現地解説板では「本陣」と表記)に至る大手は、屈曲した堀底道を通過し、右に登って小溜りと呼ばれる腰曲輪を経由し、左に曲がって小さな出枡形に登り、更に右に曲がって扇枡形と言う大きな出枡形の曲輪を通り、ようやく二ノ郭前面の枡形虎口に至るという徹底した多重枡形構造で、一体何回曲がるのかと言う程手が込んだ造りとなっている。但し、この多重枡形の部分は全体に薮が多く、見栄えしないのは残念である。大手道の左側に当たる南西斜面には、3本の横堀が穿たれて厳重な防御線を築いており、最上段の横堀は主郭の西側まで続いている。横堀の途中に、竪堀状の虎口も見られる。一方、前述の大手を登った先にある二ノ郭は、南北に細長く大手虎口付近のみ土塁が築かれている。二ノ郭の北には鞍部を経由して主郭(現地解説板では「人溜り」と表記)がある。なぜ主郭を人溜りと呼ぶのかはわからないが、二ノ郭より位置的に高く、土塁も多く築かれて防御が固められていることから、これが主郭であることは間違いないだろう。ちなみに現地標柱には本丸とある。主郭も南北に細長く、外周を低土塁で囲んでいる。主郭北側に搦手虎口があり、北に2段の腰曲輪が築かれ、小堀切が穿たれて城域が終わっている。主郭から二ノ郭の東側には帯曲輪が廻らされ、2ヶ所の東の支尾根尾根に堀切兼用の木戸口が設けられ、櫓台がそびえている。この他、小溜りと呼ばれる腰曲輪や、その下の大阪と呼ばれる腰曲輪には横堀が穿たれ、外周の横堀と合わせて南東斜面も3本の横堀が構築されている。城内は主郭と横堀の一部が薮が刈られて整備されているが、その他は薮となっている。

 以上の様に冥護山楯は、陣城にしてはかなり普請がしっかりしており、伊達家当主がこの地を拠点に本腰を入れて伊具郡奪還に望んでいたことが窺われる。
横堀と連絡・分岐する堀状通路→IMG_1229.JPG
IMG_1215.JPG←横堀
東支尾根の堀切・櫓台→IMG_1163.JPG

 お城評価(満点=五つ星):☆☆☆☆
 場所:http://maps.gsi.go.jp/#16/37.901280/140.822453/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1j0l0u0t0z0r0f0

※東北地方では、堀切や畝状竪堀などで防御された完全な山城も「館」と呼ばれますが、関東その他の地方で所謂「館」と称される平地の居館と趣が異なるため、両者を区別する都合上、当ブログでは山城については「楯」の呼称を採用しています。
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