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益子城(栃木県益子町) [古城めぐり(栃木)]

IMG_0100.JPG←主郭北側の腰曲輪と虎口
 益子城は、益子古館、根古屋城とも呼ばれ、宇都宮氏麾下の勇猛な軍事集団、紀清両党の一翼を担った益子氏の後期の居城とされている。当初の居城は益子古城であったが、後に益子城を新たに築いて居城を移したと言われている。しかしこれら以外にも巨大な山城、西明寺城があり、これら3城の関係がどうだったのかは現在でも明確にはなっていない。

 益子氏は、『下野国誌』によれば、平安後期の康平年間(1058~65年)に征東大将軍紀古佐美の後裔紀正隆が那流山(高館山)の麓に城を築いて益子氏を称し、後に山上に居城を移したとされている。また正隆は宇都宮氏の始祖宗円と血縁関係を結んでいて、宇都宮氏と深い関係にあったらしい。益子氏の系図には諸説あるため、『下野国誌』の記述が正しいとは限らないが、いずれにしても益子氏は古くから紀姓を称し、宇都宮宗円の下野進出と深い関係を持っていたことは間違いない様である。益子氏の歴史がはっきりするのは鎌倉時代以降である。1189年、正隆の孫正重は、源頼朝の奥州合戦において宇都宮氏3代朝綱に従って参陣し、清原姓の芳賀高親と共に軍功を挙げ、これ以後芳賀氏と共に「紀清両党」と並び称され、その名を轟かした。南北朝期にも、宇都宮公綱に従って各地を転戦し、名将楠木正成をして「その儀分(=器量)を量るに、宇都宮はすでに坂東一の弓矢取りなり。紀清両党の兵、元来(もとより)戦場に臨んで命を思ふ事、塵芥よりもなほ軽し。」(太平記 第6巻)と言わしめ、その鋭鋒を避けさせたほどであった。一時期、南朝方の春日顕国の軍勢に西明寺城を奪われるなど苦境に立たされることもあったが、観応の擾乱では、益子出雲守貞正は主君宇都宮氏綱に従って足利直義方の戦陣を崩壊させ、足利尊氏の薩埵山体制の構築に貢献した。戦国期に入ると、宇都宮氏の家中では度々内紛が起こり、また重臣たちは徐々に主家から独立した動きを見せ、主家への反抗も度々起こる様になった。益子氏も勝宗の頃から度々主家と事を構え、1559年には七井の矢島城を攻略して領地を拡大し、1576年には新たに七井城を築いて5男勝忠を城主にした。同年、勝宗は西明寺城を修築して居城を移したとされる。1581年、益子家宗は同じ宇都宮家臣で領地が隣接する笠間綱家と戦った。この頃から、益子氏と笠間氏は関係が悪化して、紛争が多発。益子氏の富谷城と笠間氏の橋本城は鋭く対峙し、両城を廻って攻防が繰り広げられた。また1584年には七井勝忠は主家宇都宮国綱と争い、敗れて尾羽寺で毒殺され、その子・忠兼も1586年に茂木山城守と新福寺で戦い、敗死した。こうしたことが積み重なって家宗は主家宇都宮氏に背いた。1589年、宇都宮国綱は芳賀高武ら重臣と密かに謀って家宗を攻め滅ぼし、益子氏は滅亡した。

 益子城は、比高20m程の丘陵先端部に築かれている。主郭を起点に、北と北東の2方向にY字状に分岐した地形を利用して曲輪群が築かれていた様である。最上段の主郭は、現在益子小学校に変貌しており、遺構は残っていない。その他は民有地が多く、主郭周り以外はほとんど進入することができない。辛うじて主郭周りだけ歩いてみたが、主郭北側下方に土塁が築かれた扇状腰曲輪があり、虎口が築かれている。その上方に主郭に至る虎口があり、その脇に櫓台が築かれている。もっと深入りして確認したいところだが、北麓の地主さんを訪ねてお断りしたところ、露骨に拒否感を示されてしまった。また北郭にある民家は閉鎖されており、立入りの許可を求めることもできなかった。『栃木県の中世城館跡』所収の縄張図と現状の航空写真を見比べると、主郭以外はほとんど遺構が残っていそうな感じなので、地権者の同意があれば、もっと城址公園などの史跡として整備できるだろうにと、非常に残念に感じた。益子町も、陶芸ばかりでなく史跡整備にも力を入れて欲しいところである。

 お城評価(満点=五つ星):☆☆
 場所:https://maps.gsi.go.jp/#16/36.460424/140.097849/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1j0h0k0l0u0t0z0r0s0f0


戦国大名宇都宮氏と家中 (岩田選書「地域の中世」 14)

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