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七尾城 その2(石川県七尾市) [古城めぐり(石川)]

IMG_7516a.JPG←物見台の畝状竪堀
 七尾城には、2004年に訪れているが、当時は縄張りなどのネットの情報が少ない上に、私自身まだ山城初心者の頃であったので、散策路のある主要部以外は遺構を見逃していた。また相方が以前から七尾城に行きたがってこともあり、5月連休の石川城巡りの中で再訪をした。今回は主要部以外にも、支群と呼ばれる支尾根の曲輪群や、本丸裏の長屋敷、そして最大の目的である物見台にある畝状竪堀の踏査を行った。

 まず支尾根に築かれた支群で踏査したのは、城平支群と善谷支群、それと稗子畑支群である。城平支群と善谷支群は便宜上分けられているが、実質的には一つの尾根続きに築かれた曲輪群で、上部が城平支群、下部が善谷支群となっている。ここへ行くには、桜馬場から西側の、道が消失した斜面をトラバースしつつ降っていき、腰曲輪を経由して行くことができる。高さ5~10mもの大切岸が連発して出てくる曲輪群で、曲輪の規模も大きく、各所に土塁や石塁が残っている。城平支群と善谷支群だけで並の山城一つ分以上の規模がある。
 稗子畑支群は二の丸の西尾根にあり、温井屋敷の西斜面からわずかな踏み跡を辿って行くことができる。ここも数段の曲輪群で構成されているが、やはり高さ10m程の大切岸で上段・下段が分かれている。稗子畑支群へ行く途中の温井屋敷・二の丸の西斜面には石垣がいくつも残っている。また斜面から西側に突き出た物見台が2~3段程あり、そこにも石垣が組まれている。
善谷支群の大切岸→IMG_7094.JPG
IMG_7256.JPG←西斜面物見台の石垣

 本丸裏の長屋敷は、本丸との間を大堀切で分断して築かれた山上の砦である。この大堀切は山上の城址駐車場の目の前にある。私は大堀切から屋敷南の腰曲輪を経由して登ったが、案に相違して道は消失し、薮も酷い。長屋敷に登るなら、駐車場から屋敷北斜面の腰曲輪群を経由して行くのがよい。山上には南辺を土塁で防御した屋敷跡の広い平場と、その西側に物見や櫓があったと思われる高土塁が南北に伸びている。
長屋敷の高土塁→IMG_7437.JPG

 物見台は、百間馬場と呼ばれる城山展望台に通じる車道が、七尾城へ行く車道から西に分岐する地点のすぐ東にそびえている。台形状の曲輪で、外周に腰曲輪を1段廻らし、東の尾根に堀切を穿っている。城山展望台に通じる車道は、この堀切のすぐ北側を通っており、ここから小道が伸びている。物見台の曲輪には朽ちかけたベンチがあるので、以前はきれいに公園化されていたらしい。今も、今年行った限りでは薮払いされていた。ここの白眉は、なんと言っても外周に穿たれた畝状竪堀である。NHK-BSの『英雄たちの選択 謙信vs.信長 戦国最強は誰だ? ~真説・手取川の戦い~』で、千田嘉博先生がこの遺構を紹介していたので、ご覧になった方も多いと思う。物見台の東面から南面にかけて畝状竪堀が並んでおり、テレビ撮影されたせいか綺麗に薮払いされていて非常に見やすくなっていた。中規模の竪堀群が6本以上あり、見応えがある。この畝状竪堀については、七尾城救援に向けて急速に接近中の柴田勝家率いる織田軍との籠城戦に備えて、上杉謙信が改修したものとする説が提示されている。

 今回記載した遺構群は、いずれも藪漕ぎを厭わない様な山城中級者以上向けのものであるが、七尾城の凄さを語るには見ておいて損はない。ちなみに、本城から離れた物見台は別として、七尾城の主要な曲輪(山上の散策路が整備されている部分)とここに取り上げた支群・長屋敷を含めて、踏査時間として3時間を目標としていたが、遺構群の規模が半端なく、大切岸の登り降りも大変で、結局3時間半も掛かってしまった。

 場所:【城平支群】
    https://maps.gsi.go.jp/#16/37.008362/136.981852/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1j0h0k0l0u0t0z0r0s0m0f1
    【善谷支群】
    https://maps.gsi.go.jp/#16/37.009081/136.979771/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1j0h0k0l0u0t0z0r0s0m0f1
    【長屋敷】
    https://maps.gsi.go.jp/#16/37.008550/136.985672/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1j0h0k0l0u0t0z0r0s0m0f1
    【物見台】
    https://maps.gsi.go.jp/#16/37.007728/136.991293/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1j0h0k0l0u0t0z0r0s0m0f1


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らんまる

こんにちは!

先日ははるばる信州上田までお越しいただき、感謝感激雨あられでございました、ありがとうございました!
全国区で活躍されるアテンザ23Zさんは、もっと山男っぽいイメージを勝手に想像してましたが、しなやかなお方でビックリしました(←人の事は言えず、小生のイメージを人に聞くとマタギを想像していたという方がほとんど・・・笑)

城歴僅か十年チョッとの若輩者(年齢は十分すぎるほどオッサンですが・・汗)が、プレ大会に名前を出すなど恐れ多いのですが、愛すべき地元の山城たちに恩返し出来る良い機会と思い実現させていただきました。

全くの匿名で十年もやってきたものですから、果たしてブログの読者のみなさんやtwitterのフォロワーさんの反応に戦々恐々としながらの当日でした。が、案ずるより何とかとやらで、暖かく聞いていただきまた最後には皆様にじきじきにご挨拶が叶い天にも昇る気持ちでした(笑)

七尾城は小生も十年前に夫婦旅行のついでに、どうしてもとお願いしてチョットだけダッシュでメイン部分を雨の中で見学しました。
千田先生が数年前にCGによる七尾城の再現映像を作成されたのを見て戦慄を覚えました。
隅から隅まで丸一日かけて思う存分徘徊したい・・・(笑)

長野へお越しの際は是非お声がけください。
全力でアテンドさせていただきます。奥様にも宜しくお伝えください。
by らんまる (2019-12-02 12:30) 

アテンザ23Z

>らんまるさん
こちらこそ、いつもご愛読いただきありがとうございます。
最近は余湖さんやウモさんも著名になりましたが、
らんまるさんも遂に著名人の仲間入りということで、
以前からコメントで親しくさせていただいている私としても、
とっても誇らしく思っています。

私も、年季の長い猛者の方々に比べれば、まだまだ駆け出しに過ぎませんが、
何とか80歳ぐらい近くまで健康を保って、
九州の山城まで極めていきたいと思っています。
(でもその前に長野の無数の山城群が立ちはだかっていますが・・・)

いずれ、長野の山城でご一緒したいですね。
ではでは。
by アテンザ23Z (2019-12-03 00:00) 

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