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戸根林楯(山形県長井市) [古城めぐり(山形)]

IMG_5309.JPG←主郭東に突出した櫓台
 戸根林楯は、歴史不詳の城である。草岡地区北西の標高334mの丘陵上に築かれている。この城に行くには、北西に伸びる尾根の先に車道が通っており、そこから国土地理院1/25000地形図にある点線の林道を100m程南に向かって歩き、林道が北東向きに曲がった辺りから南東の尾根方向に山林を歩いていけば、目の前に堀切が現れてくる。このルートであれば山登りする必要がないので、場所さえわかっていれば訪城はたやすい。ただ城内には草木が多く、しかも雪国特有の高反発の折れない灌木が立ち塞がっているので、踏査はなかなか大変である。

 戸根林楯は大型の単郭の城で、主郭の周囲には延々と横堀もしくは帯曲輪が廻らされている。横堀は、北東の基部の尾根では二重堀切となり、内堀の西端は折れて横堀となって主郭の西側に回り込んでいる。この横堀は短く途切れてしまうが、南端部に3本ほどの短い竪堀群が築かれている。これはちょっと意図が不明で、竪堀と言うよりも倉跡の様にも思われる。一方、北東の支尾根にも堀切が穿たれ、堀切前面には独立小郭がある。この堀切も主郭東側の横堀に繋がっている。東側の横堀は、一部で帯曲輪に姿を変えながら、延々と伸びている。主郭東側の塁線はかなり複雑に屈曲しており、下方の横堀・帯曲輪に対して多くの横矢が掛けられている。特に主郭東側に突出した櫓台があり、見事な横矢掛りとなっている。この城の大手は南東尾根にあったと思われ、この方面には複雑な虎口構造が見られる。主郭外周の横堀から降る竪堀状の城道はクランクしながら外に通じている。またこの付近だけもう一つ外側に横堀が穿たれ、この城道の横に繋がっている。横堀周囲の土塁はL字状となって上の土塁に接続し、更にこの上の土塁もL字状に折れて主郭に繋がっている。草木が多くてわかりにくいが、複雑な多重枡形を形成していた様である。また主郭の中央西側には堀切と独立堡塁があり、その上に内枡形虎口が形成されている。主郭内は、横堀・帯曲輪沿いに一段低く腰曲輪が取り巻いている。主郭の土塁は、北西部にのみ構築されている。この他、横堀の数ヶ所に竪堀状虎口が築かれて、城外に通じている。
 この様に、戸根林楯は主郭外周の約4/5程を横堀・帯曲輪で囲繞した構造で、防衛陣地のように守りを固めている。歴史が残っていないことからすると、軍事作戦上、一時的に取り立てた付城のようなものであったのかもしれない。伊達勢による構築であろうか?
南東部の横堀→IMG_5314.JPG

 お城評価(満点=五つ星):☆☆☆
 場所:https://maps.gsi.go.jp/#16/38.148716/140.009047/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1j0h0k0l0u0t0z0r0s0m0f0

※東北地方では、堀切や畝状竪堀などで防御された完全な山城も「館」と呼ばれますが、関東その他の地方で所謂「館」と称される平地の居館と趣が異なるため、両者を区別する都合上、当ブログでは山城については「楯」の呼称を採用しています。


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タグ:中世平山城
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