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岩下城(群馬県東吾妻町) [古城めぐり(群馬)]

DSCN2974.JPG←大堀切、奥は主郭
(2021年2月訪城)
 岩下城は、岩櫃城の支城である。岩櫃城を居城とした斎藤氏は、一時期庶家の大野氏に実権と城を奪われ、その配下となって岩下城を居城とした。その後大永年間(1521~28年)に、斎藤憲次が大野氏を滅ぼして岩櫃城を再び居城とすると、家臣の富沢但馬守基光を岩下城に入れて守らせた。憲次の子憲広の時、岩櫃城は武田氏の家臣真田幸隆に攻略されて没落したが、岩下城主の富沢但馬守行連は、甥の弥三郎・海野長門守等と共に岩櫃落城前に武田氏に内通し、所領を安堵された。その後富沢氏は、吾妻郡を領した真田氏に属して岩下城を守備した。行連の子勘十郎は、1575年の長篠合戦で討死したと言う。

 岩下城は、吾妻川北岸の標高545m、比高115mの山上に築かれている。吾妻川を挟んだ対岸には三島根古屋城がある。岩下城の東下まで山道が伸びているのでそこを車で上り、北の峠の部分から西の尾根に取り付けば、簡単に城に到達できる。T字型の尾根に沿って曲輪を連ねた城で、西尾根に大堀切を穿って城域を二分した一城別郭の縄張りとなっている。前述の山道から尾根を南に登っていくと、最初に浅い堀切が現れ、その先に中規模の堀切2本と小郭があり、その先に三ノ郭がある。三ノ郭は三角形に近い形状の曲輪で、西に一段低く腰曲輪を置き、東・南斜面に帯曲輪1段、また南尾根には舌状曲輪を配置し、先端部に段曲輪群を築いている。この段曲輪群の段数は、『日本城郭大系』『境目の山城と館』の縄張図に描かれているよりも多く、段曲輪中にはわずかに石積みの跡が見られる。これらの東の遺構群の西側に、前述の通り深さ10m程にも及ぶ大堀切がある。この堀切は北側に竪堀となって長く落ち、西側には竪土塁が築かれている。この竪堀に沿って、東西に腰曲輪群が築かれている。大堀切の西側にそびえるのが主郭で、後部に土塁を築いた小さな曲輪である。主郭の西に一段低く二ノ郭があり、神社が祀られている。主郭・二ノ郭の北斜面から西尾根にかけて大きな腰曲輪が築かれ、更にその下方にも腰曲輪群が築かれている。以上が岩下城の遺構で、城自体はそれほど大きなものではないが、堀切が大きく、特に城域を二分する堀切は圧巻の大きさである。北尾根から近づいて行くと、段々と堀切が巨大になっていくので、城の守りの堅さを実感できる。
北尾根の2本目の堀切→DSCN2901.JPG
DSCN2938.JPG←段曲輪群に残る石積み

 お城評価(満点=五つ星):☆☆☆☆
 場所:https://maps.gsi.go.jp/#16/36.559817/138.771969/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1j0h0k0l0u0t0z0r0s0m0f1


パーツから考える戦国期城郭論

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タグ:中世山城
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コメント 2

らんまる

ご無沙汰しておりますw

境目の城シリーズ、楽しく拝見しております。三島根古屋城はわれら信濃先方衆、発掘調査現場にまで押しかけて強引に見学させていただいたので懐かしいです(笑)

群馬の山城は信濃の山城の恩人宮坂先生と並んで山崎先生の独壇場ですが、小生はどうも「一城別郭」の考え方が理解できず今に至っております。
岩下城は三度ほど訪問しております。大手と搦手が時代によって変遷していると思うので、難しい判断ですね。城の中枢部をどこに置いたかという判断で「一城別郭」という考察になるにしても、その考察が基本で山城を当てはめていくというのは、ちょっと理解に苦しみます。
by らんまる (2021-06-18 21:08) 

アテンザ23Z

>らんまるさん
設定エラーでコメントに気付くのが大変遅れてしまいました。申し訳ありません。
また大変ご無沙汰しております。新型コロナで山城サミット本番に行けず、残念でした。
「一城別郭」の概念ですが、私の勝手な考えでは、大型の堀切で完全に隔絶された、互いに独立性の高い曲輪を併置しているもの、という様に認識しています。
ただ、「一城別郭」という考え自体が江戸時代の机上の軍学から出てきたものだと思いますので、実際に戦国時代にどの様な考えで構築されたのかは別物の可能性はありありですよね。ですので、あまり「一城別郭」という言葉にとらわれない方が良いようにも思います。
by アテンザ23Z (2021-12-20 21:58) 

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