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増山城(富山県砺波市) [古城めぐり(富山)]

DSCN0893.JPG←大手道を防衛するF郭
 増山城は、越中3大山城の一つに数えられ、射水・婦負郡守護代となった神保氏の主要な居城の一つである。史料上の初見は、南北朝時代の1362年とされる。即ち『二宮円阿軍忠状』によれば、室町幕府に敵対した前越中守護桃井直常討伐に従軍した二宮円阿は、和田合戦などを転戦した後、和田城を警固している。この和田城が増山城のことであろうと推測されているが、別説では隣接する亀山城のこととも言われる。その後、越中守護畠山氏の下で射水・婦負両郡に勢力を張った神保氏が、居城放生津城の支城として整備したとされる。神保氏は、1520年に守護畠山尚順の要請を受けた越後守護代長尾為景の攻撃で当主神保慶宗が滅ぼされて没落したが、後に慶宗の子神保長職が家名を再興し、長職は1543年に富山城を築いて居城とした。勢力を強めた神保氏は長尾方の松倉城主椎名康胤を圧迫したため、1560年、椎名氏救援のため、越後守護代長尾景虎(上杉謙信)は越中に侵攻し、神保氏を攻撃した。長職は富山城を放棄して増山城へ逃れたが、長尾勢の追撃を受けて再び落ち延びた。1562年、謙信は再度増山城を攻撃して落城させた。1566年、長職は謙信と結んで増山城に拠って一向一揆と戦った。しかし1572年頃に長職が没すると、増山城は一向一揆勢に占拠された。1576年、謙信の攻撃によって栂尾城と共に攻略され、謙信の部将吉江宗信が増山城を守った。こうして越中一国は上杉氏の支配下となったが、謙信が急死すると織田勢が越中に進出した。1581年、織田勢は増山城の上杉勢を攻撃し、城を焼き払った。1583年、越中を平定した佐々成政の支配下となり、85年には豊臣秀吉との戦いに備えて増山城を整備した。富山の役で成政が秀吉の軍門に降ると、礪波郡は前田氏に与えられ、増山城は前田利家の重臣山崎庄兵衛長徳と中川清六光重(巨海斎宗半)が守った。しかし最後の城主中川光重は不在期間が長く、実質的には妻の蕭姫(利家の二女)が城を守り「増山殿」と呼ばれた。廃城時期は不明であるが、1605年頃にはまだ存続していたことが知られている。

 増山城は、増山湖東岸にそびえる標高120mの丘陵上に築かれた城である。広大な6つの曲輪を配置し、周囲を多数の腰曲輪群で防御した巨大山城である。前日に行った松倉城もそこそこの規模であったが、それより遥かに大きく、全域を踏査するのが大変である。また各曲輪間や尾根筋を分断する堀切は、いずれも深さ10m近い規模の鋭い薬研堀で、見るからにえげつない堀切が連発している。堀切を確認するために急斜面を降りていたら、数m滑落して肋骨折ってしまった程である。国指定史跡となっているので、散策路が敷設され、城内もかなりの部分が整備されている。

 曲輪は、北西から順に馬之背ゴ・通称一ノ丸(実質二ノ郭)・通称二ノ丸(実質主郭)・三ノ丸を連ね、更に主郭の北に安室屋敷、南に無常という曲輪を配している。この内、馬之背ゴ・主郭・三ノ丸・安室屋敷には土塁が築かれ、特に主郭の北東隅(鐘楼堂)と南西隅には櫓台が築かれており、北東隅のものは規模から考えて天守があった可能性がある。大手は馬之背ゴと二ノ郭の間の谷戸にあったようで、大手を防衛する曲輪(F郭)が大手道を遮るように構築されている。大手道の両翼にある尾根筋には、大型の鋭い薬研堀が穿たれ、北尾根からの敵の接近を阻止している。また無常の南端には鐘搗堂・南櫓台という2つの土壇が各々堀切を介して連ねられている。ここから西の斜面には搦手道があったらしく、その脇には搦手道を防衛する畝状竪堀が穿たれている。また主郭の南には、堀切を介してK郭が築かれている。この堀切も深い切り通しとなって斜面を下っている。前述の鐘搗堂・K郭・三ノ丸が築かれた3つの尾根を貫通して、長大な堀切の防御線が城域南部に構築されている。この堀切ラインは、三ノ郭南では横堀となり、半円形の腰曲輪を取り巻くように円弧状に穿たれ、東端は三ノ丸東側の横堀と繋がり、更に南東に竪堀が落とされている。安室屋敷の周囲にも横堀・堀切が穿たれている。

 以上、城の主要部をラフに概観したが、ここから北東の亀山城との間にも、外郭となる御所山屋敷・足軽屋敷といった曲輪群がある。これだけの規模の城、一体どれだけの兵で守ったのか、想像することも難しい。いずれにしても曲輪の規模は近世城郭並みであり、必見の城である。
一ノ丸腰曲輪北端の大堀切→DSCN0941.JPG
DSCN0986.JPG←主郭虎口
無常南の堀切と鐘搗堂→DSCN1040.JPG
DSCN1183.JPG←三ノ丸南側の円弧状横堀

 お城評価(満点=五つ星):☆☆☆☆☆
 場所:https://maps.gsi.go.jp/#16/36.651197/137.041204/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1g1j0h0k0l0u0t0z0r0s0m0f1


戦国の北陸動乱と城郭 (図説 日本の城郭シリーズ 5)

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