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二十端城(長野県小布施町・中野市) [古城めぐり(長野)]

DSCN7561.JPG←三ノ城の小郭群の石積み
 二十端(つつはた)城は、高梨氏が築いた城砦群の一つと考えられている。伝承では、この地の土豪荻野氏が築いたともされるが明確ではない。荻野氏は、戦国期の1559年に甲斐武田氏が北信に侵攻すると、奥州に逃れたと言われる。しかし別説では、桜沢郷の領主桜沢氏によって築かれたが、後に高梨氏がこの地を支配すると高梨氏によって改修増築され、現在の形になったとも言われる。雁田城・二十端城・滝ノ入城が一つの山塊にあり、高梨氏の支配地域の南部における防衛線であったと推測されている。

 二十端城は、頂部にある滝ノ入城の北西に伸びる、約1.8kmにも及ぶ長い尾根上に広範囲に展開する長大な山城である。城内は大きく5つの城域に分かれ(ここではお城巡りの先達余湖さんに倣って、麓から順に一ノ城・二ノ城・三ノ城・四ノ城・五ノ城と呼称する)、それぞれが独立性の高い一つの城砦として完結している。北西の尾根先端から登道が付いているが、すぐに薮に埋もれて道が消失しているので、適当に尾根上に登るしかない。

一ノ城後部の堀切→DSCN7403.JPG
 尾根先端部にあるのが一ノ城で、北西に一直線に伸びる尾根が西に向きを変え、この西向きの尾根上に築かれている。この尾根は幅が広く、平坦な平場群や腰曲輪が何段も築かれているが、西半分は草木が茂っていて遺構の確認がしづらい。ただ平場群主体であることから二十端城の中では居館地区的なものだったと考えられる。後部に浅い堀切が2本穿たれ、1本目はかなり埋もれていて痕跡はわずかだが、2本目は前面に土塁が築かれた長い堀切で、南に長い竪堀となって落ちている。この堀切辺りから普請が本格化している。

DSCN7443.JPG←二ノ城の石積みがある堀切
 二ノ城は、一ノ城の後部の尾根に築かれた城で、一ノ城を支える機能を持っていた様である。先端の舌状曲輪には石列(石積み?)が残っているが、どのような意図で構築したのかはよくわからない。この曲輪の南に堀切があり、細長い曲輪と段状の小郭の背後にやや大きい堀切が穿たれている。この堀切沿いには石積みや散乱した石材が残っている。この上は細長い平坦な尾根が続き、その上に物見台状の高台があり、その背後に浅いが幅広の堀切が穿たれている。

堀切と段曲輪の石積み→DSCN7522.JPG
 二ノ城からやや離れて三ノ城がある。1/25000地形図の標高544m地点にある。三ノ城は、最も本格的な普請がなされ、石積みも多数残り、最も防備が厳重である。二十端城の中心となる城砦と言ってよい。主郭は周囲を土塁・石積みで囲んだ曲輪で、前後に堀切を穿ち、それらの前方・後方に段曲輪群・小郭群を築いている。また主郭東側にも腰曲輪が築かれている。これらの曲輪にもあちこちに石積みが残っている。堀切は、主郭前後以外にも前方の段曲輪群に1本、後方の小郭群に2本穿たれている。

DSCN7631.JPG←四ノ城の石積み
四ノ城最後部の物見郭→DSCN7634.JPG
 四ノ城は、三ノ城のすぐ背後に築かれ、三ノ城を後方から防衛する城砦である。基本的に細尾根城郭で、2つのピークにそれぞれ物見郭を配置し、それらの間の尾根と前面の尾根に曲輪群を配置している。特に最前面の腰曲輪は円弧状に長く広がっており、城道はここを西の支尾根に進み、そこから上段の曲輪に登るようになっていそうである。西支尾根には小堀切と前面の小郭があり、この城道を防御している。四ノ城にも石積みが残っている。最後部の物見郭からは四ノ城全体が俯瞰できる。この物見郭からは背後の山上にある滝ノ入城が見えるが、まだまだ遠い。

DSCN7684.JPG←五ノ城西斜面の腰曲輪群
 五ノ城は、四ノ城から離れた位置に築かれており、滝ノ入城の前衛的な城である。これも細尾根城郭であるが、四ノ城よりも普請が雑である。その一方、西斜面に何段も腰曲輪群が築かれ、この中には水場や物見台もあり、構造的な違いが見られる。また堀切がないのもこの城の特徴である。五ノ城から滝ノ入城に登る尾根の途中には、急峻な岩塊が道を塞いでおり、登城路がどの様に敷設されていたのかはよくわからなかった。

 以上が二十端城の遺構である。長野では一つの尾根に複数の城を築く例が多いが、こうした連立式山城の中でも群を抜く遺構である。5つの城の性格の違いも明確で面白い。

 お城評価(満点=五つ星):☆☆☆☆
 場所:【一ノ城】
    https://maps.gsi.go.jp/#16/36.707332/138.339758/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1g1j0h0k0l0u0t0z0r0s0m0f1
    【二ノ城】
    https://maps.gsi.go.jp/#16/36.705612/138.342075/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1g1j0h0k0l0u0t0z0r0s0m0f1
    【三ノ城】
    https://maps.gsi.go.jp/#16/36.703961/138.343599/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1g1j0h0k0l0u0t0z0r0s0m0f1
    【四ノ城】
    https://maps.gsi.go.jp/#16/36.701759/138.345315/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1g1j0h0k0l0u0t0z0r0s0m0f1
    【五ノ城】
    https://maps.gsi.go.jp/#16/36.698490/138.347890/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1g1j0h0k0l0u0t0z0r0s0m0f1


縄張図・断面図・鳥瞰図で見る信濃の山城と館〈8〉水内・高井・補遺編

縄張図・断面図・鳥瞰図で見る信濃の山城と館〈8〉水内・高井・補遺編

  • 作者: 武男, 宮坂
  • 出版社/メーカー: 戎光祥出版
  • 発売日: 2014/01/10
  • メディア: 単行本


タグ:中世山城
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