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夜交氏山城(長野県山ノ内町) [古城めぐり(長野)]

DSCN7990.JPG←大城の主郭外周の石積み跡
 夜交氏山城は、横倉城とも言い、この地の豪族夜交(よませ)氏の詰城である。夜交氏は中野氏の一族で、夜間瀬地区にあった朝廷の御牧を管轄していた牧司の笠原氏が衰えると、南北朝期初め頃にこの地に進出してきたらしい。夜交氏は最初、横倉に居館を構え、後に本郷館に移っている。山城の構築時期は明確ではない。1489年に戦死した夜交高廣が初めて甲斐守を名乗った。夜交氏は、1513年に小島氏らと共に高梨氏に叛したが鎮圧され、その後は高梨氏の被官となった。後に上杉氏に属し、1598年に上杉景勝が豊臣秀吉の命で奥州会津に移封となると、それに従ってこの地を離れた。

 夜交氏山城は、横倉地区の南東にそびえる城山に築かれている。大城と小城と2つの城から成り、大城は標高805m、比高255mの峰にあり、小城はそれより奥の標高890mの峰にある。この城は町の史跡になっているが、登山道が崩れているとの情報だったので、他のルートから訪城した。そのルートは北西斜面の作業林道を使うもので、ジグザクに作られた道を登れば標高710m付近まで難なく登ることができる。この作業林道は、麓の動物除けの柵を越えて、墓を左手に見ながら通り過ぎて進めばよい。林道から西の尾根に取り付いて、そこから斜面を直登すれば、やがて小郭と堀切が現れ、大城の城域に入る。
大城の主郭堀切から落ちる竪堀→DSCN7976.JPG
 大城は、堀切で分断された頂部の主郭・二ノ郭を中心とし、二ノ郭の左手前面に当たる西斜面に多数の腰曲輪群を築いた縄張りとなっている。腰曲輪は全部で10段程にも及ぶが、上段の方は段差が小さく、二ノ郭の一部と見做せないこともない。この腰曲輪群の先には西尾根が続き、そこには小郭群と2本の堀切が穿たれている。2本の内、上の堀切は、土橋が堀切の中央ではなく右手(城内から見れば左手)に偏して築かれている。二ノ郭は広い平坦な曲輪で、建物があったと思われる。主郭との間の堀切は規模が大きく長く、南斜面に長い竪堀となって落ちている。この竪堀から主郭南側にある、L字型土塁で囲まれた腰曲輪に登れるようになっている。主郭には搦手にしか虎口が見られないが、この土塁囲みの腰曲輪から登るようになっていたように感じられる。主郭は、外周を石塁が全周する曲輪で、中央に楕円形の小丘がある。主郭の石塁はほとんど崩れてしまっているが、多数の石が散乱しており、総石垣の曲輪だったらしい。後部に搦手虎口があり、小郭を経て背後尾根の二重堀切に至る。その先に高台になった出曲輪があり、尾根の鞍部を経て登り尾根になった先に東端の堀切が穿たれている。

DSCN8073.JPG←小城の主郭塁線の石
 小城は、大城の南東の尾根を登っていった先にある。ほぼ単郭の小さな城で、円形の主郭を頂部に置き、前面の北尾根に堀切2本を穿っている。いずれも片堀切状で、土橋は側方に偏して築かれ、その側方には竪堀が落ちている。大城でも土橋が偏して築かれているが、夜交氏の築城法の特徴の様である。主郭は土塁で囲まれた小さな曲輪で、一部に塁線上に石が置かれているので、石積みがあった可能性もある。主郭の背後の尾根は東に伸びており、小郭・細尾根曲輪と堀切が交互に穿たれている。背後の堀切は全部で3本あるが、一番内側の堀切から落ちる竪堀の脇に、もう1本竪堀が落ちていて、二重竪堀となっている。小城の先にも遠見と呼ばれるピークがあるらしいが、未確認である。

 夜交氏山城は、かなりしっかりした普請がされており、見応えがある。薮も少ないので、遺構の確認がしやすい。
小城背後の尾根の二重竪堀→DSCN8090.JPG

 お城評価(満点=五つ星):☆☆☆☆
 場所:【大城】
    https://maps.gsi.go.jp/#16/36.759026/138.419656/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1g1j0h0k0l0u0t0z0r0s0m0f1
    【小城】
    https://maps.gsi.go.jp/#16/36.755794/138.423336/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1g1j0h0k0l0u0t0z0r0s0m0f1


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タグ:中世山城
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