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将門関連史跡 その2 [その他の史跡巡り]

 以前、2010年に平将門の本拠地石井営所など将門関連の史跡を訪ね歩いたが、その他にも茨城県内南西部には各所に将門にまつわる史跡が散在していることが、その後わかっていた。今年の初夏、久しぶりにこうした将門関連史跡を廻ってみた。尚、これらの史跡については、「将門ブログ」に記載されている膨大な量の情報から多くの知見を得た。

<三国三公頌徳碑>(茨城県結城市)
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 三国三公頌徳碑は、平貞盛・藤原秀郷・結城朝光の3人の武将の業績を讃えた石碑で、戊辰戦争の際に旧幕臣を組織して函館政府を樹立した榎本武揚の撰になる碑文である。尚、この石碑の隣には水戸城主江戸氏の最後の当主江戸重通の碑が建っている。

 平貞盛は、常陸大掾平国香の嫡子で、将門の従兄弟に当たる。将門の乱の際に、将門討伐軍の将となり藤原秀郷と共に将門を打ち破った。貞盛の系統は桓武平氏の嫡流となり、伊勢平氏や常陸大掾氏などを輩出した。

 藤原秀郷は、俵藤太とも呼ばれ、現在の栃木県佐野市付近に本拠を持った豪族で、平貞盛と共に将門を打ち破った。その功績によって鎮守府将軍となり、渡良瀬川流域に広くその子孫が蟠踞した。中でも特に藤姓足利氏と小山氏は「下野の両虎」と称され、その勢力を競っていたが、源頼朝の挙兵の際の去就によって、足利氏は滅んだ一方で小山氏は大きくその勢力を伸ばし、以後は小山氏が秀郷流藤原氏の嫡流と目せられた。

 結城朝光は、小山朝政の弟で結城氏の祖である。源頼朝が挙兵した際、かつて頼朝の乳母であった母の寒河尼に連れられて、武蔵国隅田宿の宿所で頼朝に対面し、以後は頼朝の寵遇を受けた。

 場所:https://maps.gsi.go.jp/#16/36.296216/139.844799/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1j0l0u0t0z0r0f0

<結城諏訪神社>(茨城県結城市)
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 940年、朝廷からの平将門討伐の宣旨を受けた藤原秀郷は、この地に諏訪神社を勧請して戦勝祈願を行ったと伝えられる。そして見事に将門を討ち取った秀郷は、翌年諏訪神社を創建した。以後、その子孫からの尊崇厚く、源頼朝の奥州合戦に出陣する小山朝政・結城朝光兄弟は当社に戦勝祈願をしてから出立したと言う。境内には「勝負岩」という大岩があり、将門の軍勢の矢から秀郷を守ったと伝えられる。

 場所:https://maps.gsi.go.jp/#16/36.243122/139.871879/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1j0l0u0t0z0r0f0

<伝・源護館>(茨城県下妻市)
IMG_5403.JPG←大串の富士神社
 源護は、筑波山西麓に広く勢力を有していた豪族で、平国香以前の常陸大掾職を務め、娘を平国香・平良兼・平良正らに嫁がせていた。935年、息子の扶、隆、繁ら3兄弟が将門と争い、野本合戦で悉く敗死して、護の本拠も将門に焼き払われたと言う。大串の富士神社付近には、その居館があったとされる。この地は大宝城の南続きの台地上に位置し、周囲には往時は大宝沼が広がっていた事から、居館を築くに適した要害の地であったと推測される。

 場所:https://maps.gsi.go.jp/#16/36.197768/139.973631/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1j0l0u0t0z0r0f0

<石田館(平国香館)>(茨城県筑西市)
長光寺→IMG_5408.JPG
 筑西市東石田は、将門の伯父で常陸大掾であった平国香の本拠があった。現在長光寺の建つ付近一帯が、平国香の居館があった場所と伝えられている。国香は源護の娘婿であったため、935年に護の息子たちが将門と争うと、国香は源一族の側に付いて自ら軍を率いて参戦した(野本合戦)。しかし将門の精鋭軍に敵わず、石田館に逃げ帰ったが将門軍は追撃して石田館を攻撃した。傷を負っていた国香は、館に火をかけられて敗死したと言う。

 場所:https://maps.gsi.go.jp/#16/36.220881/140.048218/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1j0l0u0t0z0r0f0

<平国香墓>(茨城県筑西市)
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 石田館跡とされる長光寺の南東550m程の畑の中に、平国香の墓と伝わる石塔がある。畑への入口脇に解説板が昨年設置され、場所がわかりやすくなっていて助かった。石塔の背後には雄大な筑波山の山容を望むことができる。

 場所:https://maps.gsi.go.jp/#16/36.217869/140.053046/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1j0l0u0t0z0r0f0

<弓袋山古戦場>(茨城県石岡市)
奥の山が湯袋山→IMG_5426.JPG
 937年9月、将門は平良兼の居館のある服織の宿に向けて進軍し、良兼の館やその家臣の館を焼き払った。良兼は、将門が来る前に一族と軍勢を率いて筑波山中の弓袋山(湯袋山)に逃げ込み、山中に隠れた。将門は陣を堅固に作って敵襲に備える一方、山中の良兼を攻めようとするが、互いに持久戦となり、勝敗を決しないまま軍勢を引き上げたと言う。
 弓袋山合戦は、県道150号線が筑波山北東の山稜を横切る湯袋峠付近であったのだろう。この地は、北西に伸びる山稜の先端付近にあったとされる平良兼館方面から道1本で繋がっており、確かに急場しのぎで良兼一族が立て籠もるには、都合が良かったのだろう。藪だらけなので、山中には入らず、峠付近の近景と麓から湯袋峠付近の遠望だけ写した。

 場所:https://maps.gsi.go.jp/#16/36.241011/140.124457/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1j0l0u0t0z0r0f0

<御堂の越の碑(将門供養碑)>(茨城県桜川市)
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 后神社の東南100m程の丘の上の墓地に、御堂の越の碑と呼ばれる将門供養碑がある。伝承では、将門を滅ぼして乱を鎮定した後、平貞盛が将門供養の為に建立したものだと言う。現在は一般の方の墓の真裏に数個の墓石や石碑があり、多分これだろうということしかわからない。一般墓地と20cm程しか離れておらず、なんかあまりにも可哀想な状態だった。もし貞盛が立てたという伝承が本当だったら、極めて貴重な文化財と思うのだが、全く信用されていないのか、何らの保護措置も案内板の設置もされていないのは悲しいことである。

 場所:https://maps.gsi.go.jp/#16/36.325317/140.079074/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1j0l0u0t0z0r0f0

<后神社・きさきの井>(茨城県桜川市)
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 后(きさき)神社は、将門の妻「君の御前」を祀った神社である。解説板によれば、承平の頃に平真樹と言う豪族が、この大国玉字木崎に居を構えていた。真樹は、将門の父良文の遺領大国玉地方を領しており、その娘が将門に嫁いだ。前常陸大掾・源護の子・扶、隆、繁らは君の御前に懸想し、これを略奪しようとして将門を襲った。しかし戦は将門・真樹の勝利となり、扶、隆、繁らは敗死し、源一族に援軍として加わっていた将門の伯父平国香も自殺した。以後、将門は伯叔父たちと相争うこととなった。937年7月、服織に住む叔父平良兼が、将門を攻撃した。同月18日、猿島郡陸閑において、君の御前とその子が良兼の配下によって斬殺された。死後祭祀の礼を享け、后神社と称したと言う。ご神体は平安時代五衣垂髪の女人木像で、君の御前の木像であるらしい。尚、現在この地を「木崎」と呼ぶのは、后の転訛であると言う。
 また、后神社の裏の道路を挟んで東の斜面下には、大国玉七井の一つ「きさきの井」の井戸跡がある。
IMG_5435.JPG←きさきの井
 場所:https://maps.gsi.go.jp/#16/36.325645/140.078151/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1j0l0u0t0z0r0f0

<将門宝塚>(茨城県桜川市)
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 将門宝塚は、将門が財宝を埋めた塚だと言われている。后神社の北東200m程の位置、河岸段丘東端部の山林内に円墳状の塚があり、頂部に祠が祀られている。土地の人からは、「宝塚さま」と呼ばれていると言う。

 場所:https://maps.gsi.go.jp/#16/36.326942/140.079632/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1j0l0u0t0z0r0f0

<御門御墓>(茨城県桜川市)
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 御門御墓は、平将門とその一族の墓と伝えられている。ここは将門の居館があったところと言われ、将門らの霊を供養するため、後年五輪塔を建立したものと推測されている。4基の五輪塔が残っているが、これらは鎌倉初期の作とされている。尚、「みかど」の地名は、新皇を僭称した将門の居た所から、当初は「帝」の字を当て、その後、「御門」→「三門」と変遷した。三門の集落続きの木崎が、古くは「后」の字を当てていたのと一対になっており、天慶の古い歴史を今に伝えていると言う。
 尚、「将門ブログ」の管理人の方が、『将門の御墓(東向き)は、将門の妻「君の御前」を祀る后神社(西向き)と向かい合うように建っています。これは偶然ではないでしょうね。』とコメントしておられるが、ものすごく鋭い観察眼であり、恐れ入るばかりである。

 場所:https://maps.gsi.go.jp/#16/36.330105/140.068903/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1j0l0u0t0z0r0f0


※この続きは「その3」へ。
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