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大増城(茨城県石岡市) [古城めぐり(茨城)]

IMG_4332.JPG←南東に落ちる大竪堀
 大増城は、この地の豪族古尾谷氏の居城である。『真壁氏文書』等によれば、1383年に鎌倉公方足利氏満は、前肥後守の古尾谷朝景に真壁郡源法寺郷を与えたとあり、これが常陸古尾谷氏の文献上の初出であるらしい。また1387年には、古尾谷肥後守朝景が安部田郷(真壁郡大和村)に入部したとある。1446年には、古尾谷憲景は関東管領山内上杉氏に属し、憲景に継嗣がなかったため縁戚に当たる臼田勘解由左衛門尉の子・藤四郎政重を養子に迎えて所領を譲り渡している。戦国中期の1549年には小田城主小田氏治が古尾谷広四郎に領地を宛行っており、小田原北条氏に河越夜戦で敗れて没落した山内上杉氏から離れ、小田氏の属将となっていた様である。古尾谷氏がいつから大増城を居城としたかは不明であるが、1555年には「大増城主」古尾谷隠岐守治貞が城下の顕徳院を祈願所とし、1559年に治貞は城下に正法寺を開基して古尾谷氏の菩提寺としていることから、戦国中期までには大増城を居城としていた。その後、佐竹氏が勢力を拡張し、敗れた小田氏が衰退すると、古尾谷氏は佐竹氏に従った。1602年に佐竹氏が出羽秋田に移封となると、古尾谷氏も秋田に移ってこの地を離れた。大増城はこの時廃城になったと推測される。

 大増城は、加波山の東の裾野に位置する標高100m、比高50m程の丘陵上に築かれている。山頂の主郭から北東に広がる緩斜面上にいくつもの曲輪を段々に配置している。丘陵は更に東へも広がっているが、どこまで城域であったのかは明確ではない。この東の丘陵地は旧畑地で北麓から登道も付いているが、現在は完全に放置され、物凄いガサ藪で進入不能である。ちょっと諦めかけたが、正面が無理なら横に回り込んで攻め登るのが城攻めの基本!ということで、前述の登道から南西の台地上に取り付いて訪城した。山林内に綺麗に段々の曲輪群が残っており、二ノ郭北東には坂土橋が付いている。二ノ郭と主郭は基本的に切岸だけで区画されているが、主郭前面に横矢掛かりの入隅があり、主郭東側には空堀が穿たれて、その外側に土塁が築かれている。実はこの土塁が主郭への大手道で、土塁道はそのまま右に約45°曲がって土橋となり、主郭側方に築かれた大手虎口に繋がっている。土橋の側方には竪堀が穿たれ、前述の空堀と共に虎口の動線を狭めている。これは、小田原北条氏勢力の城に多く見られる構造で、同様な例は武蔵天神山城の東出郭・下野唐沢山城の南東遺構群・下野諏訪山城・上野真下城などで見られる。大増城に北条的築城技法が使われていることについては、後ほど考究することにする。主郭は、後部に大きな土壇と土塁を築いており、櫓が建てられていた可能性もある。北西斜面には横堀が穿たれ、横堀中間部では北麓に向かって竪堀状の城道が伸びている。おそらく搦手であろう。従って、この横堀は堀底道として機能していたことがわかる。横堀は主郭背後の堀切に繋がっている。主郭背後は二重堀切が穿たれ、更に尾根上の小郭・土壇を経由して、もう1本の堀切で城域が終わっている。一方、主郭背後の堀切(二重堀切の内堀)から南東に大竪堀が落ちており、その側方には大きな竪土塁も築かれている。大竪堀の東側には段状に曲輪群が築かれ、竪堀に対して物見台も築かれており、この側方曲輪群から竪堀底の敵を迎撃できる構造となっている。以上が大増城の遺構の概要である。

 さて、小田原北条氏勢力の城に多く見られる、竪堀・横堀連携型の屈曲土橋の構造が大増城でも見られる件であるが、これはどういうことであろうか?小田氏は、最後の当主小田氏治時代に凋落し、佐竹氏に攻め込まれ、北条氏に支援を求めている。その結果であろう。小田氏の本城、小田城でも発掘調査の結果、北条氏の築城技術として名高い障子堀が見つかっていることを考え合わせれば、北条氏の領国に完全に組み込まれなかったにしても、佐竹氏への対抗上、北条氏が小田氏に技術支援をしていた可能性が考えられる。

 尚、以下に顕徳院の方から伺った話を記載しておく。大関集落は宿場町で、東に関所があった。集落内(お寺の方の表現だと「その辺」)に城主居館があった。城主の古尾谷氏は、寺を集落の周辺に配置して小京都みたいな町を作ろうとしたらしい。城主の墓は、以前に他の寺にあったらしいが今は失われてしまった。顕徳院は、昔の火事で古文書がかなり焼失してしまっており、昔の歴史があまり伝わっていない。等の話を伺うことができた。
主郭大手の土橋→IMG_4291.JPG
IMG_4311.JPG←主郭北西斜面の横堀

 お城評価(満点=五つ星):☆☆☆
 場所:http://maps.gsi.go.jp/#16/36.305485/140.170505/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1j0h0k0l0u0t0z0r0s0f0
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