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韮山城支砦群(静岡県伊豆の国市) [古城めぐり(静岡)]

 韮山城の南東には、標高128m、比高100m程の独立状の山地に、天ヶ岳砦を頂点とする支砦群が築かれて外郭を形成していた。比高僅か35m程しかない韮山城が、小田原の役の際に3ヶ月にわたる籠城戦に耐えたのは、一つにはこの外郭が大きな防御力を発揮したからと考えられる。八丁堀さんのHP「土の古城探訪」に詳しい解説があり、それをガイドとして遺構を巡ってみた。

<江川砦>
DSC07305.JPG←江川砦の畝堀
 江川砦は、支砦群最北端を守る砦で、韮山北条氏の重臣江川氏の屋敷のあった江川曲輪背後の丘陵上に築かれている。南北に長い尾根に沿って数段の曲輪が築かれ、尾根筋を分断する2本の堀切と、東側斜面にも横堀があり、その外側に土塁と腰曲輪も置かれている。見所は堀切であるが、いずれの堀切も規模が比較的大きい。特に2番目の堀切は、河村城ばりの畝堀で、見事な遺構を残している。

 場所:http://maps.gsi.go.jp/#16/35.053608/138.959016/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1j0h0k0l0u0t0z0r0s0f1

<天ヶ岳砦>
主郭南の片堀切→DSC07391.JPG
 韮山城支砦群の主峰であり中枢である。標高128mの山頂を頂点に、四方に伸びる細尾根に広範に遺構を残している。規模の小さな堀切が各所に多数築かれ、多くの段曲輪群で構成されている。頂部の主郭南には方形に繰り抜いた片堀切があり、非常に珍しい形の堀切である。この片堀切の脇は、細い蟻の戸渡り状の土橋となっている。東尾根には、尾根筋の道に沿って土塁が並走するが、この辺りは攻城軍側の築いた仕寄遺構であるらしい。また西尾根の先の和田島砦との間には城中最大の大堀切があり、豪快である。八王子城太鼓曲輪ばりの大堀切で、側方に削り残しの岩があり、もしかしたら畝堀であったかもしれない。
DSC07608.JPG←西尾根の大堀切

 場所:http://maps.gsi.go.jp/#16/35.049814/138.957900/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1j0h0k0l0u0t0z0r0s0f1

<金谷砦>
仕寄土塁(畝状阻塞)→DSC07410.JPG
 天ヶ岳砦の南の尾根を守る砦。砦主郭の虎口には土塁が築かれている。また細尾根上に連続する仕寄土塁が築かれる他、尾根筋に沿って長土塁も築かれている。

 場所:http://maps.gsi.go.jp/#16/35.047782/138.959319/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1j0h0k0l0u0t0z0r0s0f1

<土手和田砦>
DSC07550.JPG←主郭南側の畝堀
 支砦群最西方を守る、半独立状の丘陵地に築かれた砦である。北側は藪がひどいが、それ以外は薮が伐採されており遺構の確認がしやすい。主郭南側の堀はここも畝堀で、L字状にクランクし竪堀に変化している。この畝堀の南側に櫓台状の高台があるが、ここに意図が謎のL字型の土壇がある。また、土手和田砦から天ヶ岳砦に続く尾根には2~3段の段曲輪が築かれ、そこを登った先に畝堀の堀切がある。この堀切の両側から2本の竪堀が落とされている。
天ヶ岳砦に続く尾根の畝堀→DSC12746.JPG

 場所:http://maps.gsi.go.jp/#16/35.049779/138.953565/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1j0h0k0l0u0t0z0r0s0f1

<和田島砦>
DSC07635.JPG←主郭虎口
 和田島砦は土手和田砦の南に位置し、土手和田砦と連携して支砦群最西方を守る砦である。割と単純な直列段曲輪群で構成された縄張りで、主郭には若宮八幡神社が鎮座している。主郭の虎口が明瞭に残り、どうも前面の虎口は櫓門であったように見受けられる。

 場所:http://maps.gsi.go.jp/#16/35.047830/138.955319/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1j0h0k0l0u0t0z0r0s0f1

<岩戸山砦>
長土塁→DSC07829.JPG
 追越山付城に相対する最東方の砦。金谷砦から東に伸びる尾根に築かれており、先端には広い平場があり、まさしく防御陣地であった様である。この平場から尾根に繋がる上方には穴がいくつもあるが、蛸壺遺構であろうか?またこの砦で特徴的なのは、尾根筋に沿った長土塁の遺構で、ゆるやかなカーブを描く土塁遺構は会津九々布城の様である。この砦と金谷砦の間も大堀切で分断されている。
DSC07870.JPG←大堀切

 場所:http://maps.gsi.go.jp/#16/35.047776/138.963608/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1j0h0k0l0u0t0z0r0s0f1

 北条氏の城で本城を防衛する支砦群としては、足柄城周辺城塞群があったが、足柄城のものは割りとささやかな遺構であったので、韮山城支砦群も正直それほど期待はしていなかった。しかし畝堀あり、大堀切あり、長土塁ありと予想外に変化に富んだ遺構群で、非常に楽しめた。一通り回るには半日ほどを要するが、一見の価値はある。また攻防の場となった仕寄遺構が残るというのも珍しい。

 お城評価(満点=五つ星):☆☆☆
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コメント 2

らんまる

ほほう、独特で見事な遺構が残っているんですね。
早雲の匂いのする(?)韮山城は是非とも訪ねたい城でございます。
やはり砦群に守られていた堅城でしたか。
一週間ぐらい休暇を取って探索してみたいものです(笑)
by らんまる (2012-05-17 07:24) 

アテンザ23Z

>らんまるさん
早雲の匂いと言うよりは、
小田原の役の匂いという方が合っていると思いますよ。
1週間あれば、伊豆の主要な城は制覇できますね。
ぜひ韮山城ともども行ってみてください。
by アテンザ23Z (2012-05-17 18:10) 

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