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山入城(茨城県常陸太田市) [古城めぐり(茨城)]

IMG_1429.JPG←櫓台を備えた主郭
 山入城は、佐竹氏の有力支族山入氏の居城である。元々は、南北朝時代に西野民部大夫温通が初めて築いたと言われる。その後、南北朝の抗争の中で、佐竹貞義は終始一貫して足利方に従って常陸南朝勢力討伐に軍功を挙げて常陸守護となり、その7男師義は直接足方尊氏の軍勢に従って九州落ちにまで従い、筑前多々良浜の合戦、摂津湊川の合戦等に功を挙げた。また師義は、足利家の内訌、観応の擾乱でも尊氏に従い、尊氏から常陸国山入を所領として与えられて山入氏を称し、山入城を修築して本拠とした。(個人的な推測だが、師義の「師」の字は将軍執事であった高師直の偏諱ではないだろうか。もしそうだとすれば、師義は師直率いる幕府直轄軍に属していたことになろう。また師義は『源威集』の作者ではないかとの説もある。)師義は、観応の擾乱の中で摂津で討死したとされるが、異説もある。師義が死ぬと、その子与義が跡を継ぎ、室町将軍直轄の「京都扶持衆」に列し、鎌倉公方に属する常陸守護の佐竹宗家に比肩する、半ば独立する勢力を有した。1407年、佐竹氏12代義盛が嗣子なく没すると、鎌倉公方足利持氏の干渉による関東管領上杉氏からの入嗣を巡って、山入与義は同族の長倉氏・額田氏らと山入一揆を結成して反発し、翌年、長倉義景が長倉城で挙兵して、ついに佐竹家中を二分する武力抗争に発展した。「山入の乱」の始まりである。その後、一旦鎮圧されたが、上杉氏から入嗣した佐竹義憲に対し、山入氏らは事々に反発し、1416年に上杉禅秀の乱が発生すると、山入一揆は禅秀方に味方した。しかし翌年乱は鎮圧され、18年には山入与義が拠る山入城は義憲の軍に攻め落とされ、与義は降伏した。乱はこうして鎮圧されたものの、鎌倉公方の独走に危惧を抱く室町幕府は、山入氏を常陸守護に任じ、佐竹義憲がこれに抗議して、佐竹氏と山入氏とが半国守護として並び立つこととなった。幕府の後援を背景に山入氏は佐竹宗家に対抗しうる勢力を有し、山入の乱は100年にも渡って続くこととなった。1477年、勢力を盛り返した山入義知は、佐竹義武(佐竹氏14代義治の子)が守る久米城を攻め落とした。しかし佐竹義治は直ちに軍を率いて久米城を奪還し、義知を敗死させた。義知の討死後、その弟義真は山入氏の領土を固めると共に佐竹宗家との対立を継続し、1490年、義真の子義藤・孫の氏義父子は、義治が死去して佐竹氏当主を継いだばかりの義舜を攻めて、佐竹宗家の本拠である常陸太田城を占拠して居城を移し、山入城には馬坂城主天神林義益を置いて守らせた。義舜は外祖父の大山義長を頼って大山城に逃れ、義長は義舜を孫根城に匿った。義舜は10年もの間孫根城に居たが、1500年、山入氏義は孫根城を攻め、義舜は金砂山城に逃れて抵抗した。2年後、金砂山城の戦いに勝利した義舜は勢力を盛り返し、常陸太田城を奪還して復帰した。氏義は山入城に撤退して抵抗を続けたが、1506年に山入城は落城し、氏義は子の義盛と共に捕らえられ、下野国茂木で殺害された。こうして、佐竹氏を動揺させ続けた山入の乱はようやく収束した。

 山入城は、山田川西岸にそびえる標高185.3m、比高145mの要害山に築かれている。南東から山道が整備されており、城内まで車で突入できるので登城は楽である。純然たる連郭式山城の縄張りで、山頂に大きな櫓台を備えた主郭を置き、南西に伸びる尾根に二ノ郭以下の主要な曲輪群を連ねている。途中、『図説 茨城の城郭』の縄張図で言うⅣ郭の前後のみ、堀切で分断されているが、それ以外は切岸のみで区画されている。曲輪の削平はいずれもしっかりしている。Ⅳ郭の南東斜面にも平場群(Ⅴ郭群)が残っており、現地に設置された城の想像図では、前述の主郭を「詰の城」、Ⅴ郭群を「本城」としている。Ⅴ郭群も遺構がよく残っており、切岸で区画された曲輪が明瞭で、曲輪同士を繋ぐ城道もはっきりしている。これら以外に、Ⅱ郭の南西尾根にも小掘切を穿った段曲輪群、また主郭背後の北の細尾根にも3条の堀切と若干の平場がある。
 山入城にはもう一つ、主城から東に伸びる支尾根に東曲輪群があり、主城とは切り離された独立性の高い出城として機能していたと思われる。東曲輪群は、Ⅳ郭から東曲輪群先端近くにある日吉神社への山道がそのまま遺構群巡りをする道になっており、尾根上に多数の平場や数本の堀切、土壇などが確認できる。
 山入城は城域が広く、さすがは佐竹一族で強勢を誇った山入氏の本拠であるが、その割には城自体は普通の出来である。技巧性のあまり高くない普請から考えると、戦国初期に山入氏が滅亡してからは、ほとんど顧みられることがなかったことが想像される。尚、城内は一応公園として整備されているが、Ⅱ郭など冬でも草茫々の部分も多い。
東曲輪群の堀切→IMG_1565.JPG

 お城評価(満点=五つ星):☆☆☆
 場所:http://maps.gsi.go.jp/#16/36.599732/140.478637/&base=std&ls=std&disp=1&lcd=airphoto&vs=c1j0l0u0f0
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