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座主楯(岩手県矢巾町) [古城めぐり(岩手)]

DSCN8827.JPG←北辺の三重横堀の一部
 座主楯(座主館)は、伝法寺楯とも言い、歴史不詳の城である。この城の南に隣接して平安時代の創建と伝えられる寺院跡があることから、平安時代まで遡る城とも、或いは安倍氏時代の城との説もある。また『日本城郭大系」では、伝法寺右衛門という武士の居城とされるが、詳細は不明である。平成2年の発掘調査の結果では15~16世紀代の遺物が出土しており、戦国時代の城砦であることは疑いがない。

 座主楯は、北谷地山から東に張り出した尾根先端部に築かれている。町の史跡に指定され、現在は舘山公園として整備されている。山頂の主郭に主郭を置き、そこから東に広がる斜面に扇形に腰曲輪群を段々に築いている。主郭内は北・南・東と3段に分かれている。主郭外周から、腰曲輪群の北辺・南辺を二重横堀でコの字状に囲んだ構造となっている。これらの内、主郭北面では更に外側に横堀が穿たれて、三重横堀となっている。この三重横堀は、主郭の北東端下方で、内堀と中堀が合流して1本となり、外堀と合わせて二重横堀となって腰曲輪群の北辺を降っている。二重横堀の下方は、中間土塁が広がって武者溜まりのような空間を形成している。外堀は、主郭北西部で背後の尾根に築かれた北郭に沿って北西に曲がり、そのまま北郭と並走して北郭背後の堀切に繋がっている。堀切との交差部では側方に竪堀が落ちている。南辺の二重横堀では、内堀は途中で腰曲輪に回り込んで曲輪と同化している。外堀は、南に屈曲して降っており、登城道になっている。この他、東斜面の腰曲輪群には、井戸跡や登城路があり、竪堀状の登城道も確認できる。ただ、公園化で改変されている部分もあると思われるので、これら全てが往時のものかどうかは明確ではない。いずれにしても座主楯は、多重横堀で防御線を構築した城であり、飯岡楯に近似した構造をしている。勢力圏・縄張面から考えて、高水寺城主斯波氏に関連した勢力の城と推測される。
主郭→DSCN8887.JPG
DSCN8941.JPG←腰曲輪群の竪堀状の登城道

 お城評価(満点=五つ星):☆☆☆
 場所:https://maps.gsi.go.jp/#16/39.595909/141.105931/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1g1j0h0k0l0u0t0z0r0s0m0f1


※東北地方では、堀切や畝状竪堀などで防御された完全な山城も「館」と呼ばれますが、関東その他の地方で所謂「館」と称される平地の居館と趣が異なるため、両者を区別する都合上、当ブログでは山城については「楯」の呼称を採用しています。


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タグ:中世平山城
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