SSブログ

角城楯(岩手県遠野市) [古城めぐり(岩手)]

DSCN6693.JPG←三重堀切
 角城楯(角城館)は、沢村氏の城と伝えられる。沢村氏について詳しいことはわからないが、大槌孫三郎の兄との伝承があるらしい。一説には建保年間(1213~19年)の築城とされるが、現在残る遺構は明らかに戦国期のものであり、遠野阿曽沼氏支配時代の遺構と推測される。

 角城楯は、小烏瀬川西岸の比高100m程の山上に築かれている。Y字型をした尾根に曲輪が展開しており、山頂が主郭、南尾根が二ノ郭、南東尾根が三ノ郭である。南麓から小道があり、それを登っていくと二ノ郭前面の段曲輪群に至る。段曲輪群を登っていくと、細尾根先端の二ノ郭に至る。二ノ郭は物見台的な小郭で、両側方にも帯曲輪を築いている。後ろの尾根を伝っていくと、再び腰曲輪群が現れ、その上に主郭がそびえている。主郭は外周に1~2段の腰曲輪が取り巻き、背後の尾根にはなんと三重堀切が穿たれている。2つ目の堀切の後ろには小郭がある。この三重堀切から落ちた竪堀は、東西両翼で二重横堀に変化して主郭下方の斜面を走っている。この内、東のものは二重横堀が両方とも直角に曲がって竪堀になって落ちている。この上には三ノ郭があるが、三ノ郭は段曲輪群で構成された郭群である。この他、三重堀切の先の尾根にも堀切っぽい地形があるが、山道を切り開いたような跡があり、形状もやや不明瞭で遺構とは判断し難い。いずれにしても、遠野地域の山城の例に漏れず、多重堀切とそこから派生する多重横堀で防御を固めた、見事な遺構である。
腰曲輪と主郭→DSCN6652.JPG
DSCN6602.JPG←東の二重横堀

 お城評価(満点=五つ星):☆☆☆☆
 場所:https://maps.gsi.go.jp/#16/39.371804/141.593599/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1g1j0h0k0l0u0t0z0r0s0m0f1

※東北地方では、堀切や畝状竪堀などで防御された完全な山城も「館」と呼ばれますが、関東その他の地方で所謂「館」と称される平地の居館と趣が異なるため、両者を区別する都合上、当ブログでは山城については「楯」の呼称を採用しています。


パーツから考える戦国期城郭論

パーツから考える戦国期城郭論

  • 作者: 西股 総生
  • 出版社/メーカー: ワン・パブリッシング
  • 発売日: 2021/02/26
  • メディア: Kindle版


タグ:中世山城
nice!(4)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー