伊奈氏陣屋（埼玉県伊奈町）

←二ノ丸付近の土塁跡
　伊奈氏陣屋は、伊奈氏屋敷とも呼ばれ、関東に入封した伊奈氏が築いた陣屋である。伊奈氏の事跡は、赤山陣屋でも記載したが、小田原北条氏滅亡後、関東に入国した徳川家康に従って入封した伊奈熊蔵忠次が、小室など1万石を領してこの地に陣屋を置いた。伊奈氏は元々信州伊奈の豪族で、忠次の祖父忠基の時に徳川氏に従ったという。この地に陣屋を構えた忠次は、関東郡代として関八州の天領（幕府直轄領）を治め、水利・治水事業などで大きな足跡を残したという。1642年に3代忠治は赤山7千石を賜って新たに赤山に陣屋を築いて移り住むまで、この地が地方経営の拠点となった。
　伊奈氏陣屋は、低湿地帯の中に浮島のように浮かぶ台地上に築かれており、その地勢や構造は平城そのものである。元々陣屋が構えられる前から、中世城郭が築かれていた可能性も指摘されている。すぐ西側を東北・上越新幹線の高架が通るが、広大な城域の壊滅的破壊は免れ、現在でも部分的ではあるがなかなか良く遺構が残っている。二ノ丸とされる部分には明確な土塁や空堀跡のほか、南東端には水堀跡も良好に残っている。また、新幹線の高架脇には、裏門跡と伝えられる場所があり、埋め戻されて見ることはできないものの障子掘跡が発掘されたという。
　ただ、広い陣屋内には現在多くの民家や畑が立ち並び、地元自治会の史跡保存反対の立て看板があちこちに建っている。行政のやり方の問題であろうか？残念なことである。

南東端の水堀跡→

←現地解説板の障子掘発掘写真

　お城評価（満点=五つ星）：☆☆
　場所：https://maps.gsi.go.jp/#16/35.976374/139.626746/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1j0h0k0l0u0t0z0r0s0m0f1

タグ：陣屋 近世平城

コメント 6

アテンザ23Z さん、国府台城（市川城）の話題でお邪魔して以来、興味深く拝読させていただきました。
2010年もアテンザ23Z さんにとって実りのあるブログを綴られんことを祈念しております！
by 江州石亭 (2009-12-31 09:49) 

>江州石亭さん
こちらこそ1年間お世話になりました。ここしばらく試験勉強の後遺症でブログのアップが滞っていましたが、またアップしていきますのでよろしくお願いします。江州石亭さんも、よいお年を！
by アテンザ23Z (2009-12-31 14:48) 

障子掘見てみたかったですね。地元の人に愛される史跡にしてもらい
たいですね。来年もよろしくお願いします。アテンザ23Zさんの情熱に
負けないよう、それがしもお城を廻りたいデス。
by ノリパ (2009-12-31 16:58) 

>ノリパさん
今年1年間、度々ご声援いただきありがとうございました。ひじょうに励みになりました。来年もよろしくお願いします。ノリパさんの西国の城のレポートを来年も楽しみにしております。

PS.リクエストにお応えして、障子掘の発掘写真を追加しました。
by アテンザ23Z (2009-12-31 18:34) 

すごい障子堀ですね。もう一回掘り起こして保存した方がいいですね。
それがしも本でしか見たことないから実物見に行きたいです。
by ノリパ (2010-01-02 17:57) 

>ノリパさん
本当にすごいですよね、この障子堀。
こんなのが実際に見れると本当にいいんですけれど、
地上に晒してしまうと、風化などで破壊されるので、
掘り起こした状態のままの保存は難しいのでしょうね。
残念です。
by アテンザ23Z (2010-01-03 19:17)