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楽々前城(兵庫県豊岡市) [古城めぐり(兵庫)]

DSC04552.JPG←圧巻の畝状竪堀
 楽々前(ささのくま)城は、但馬守護山名氏の重臣で山名四天王の筆頭とされる垣屋氏の居城である。垣屋氏は、南北朝時代に足利家の重臣であった山名時氏の直臣として、時氏の但馬入部と共に垣屋重教が但馬に入り、但馬守護代となった。山名一族の内訌に付け入った3代将軍足利義満の挑発に乗って山名氏清が起こした明徳の乱では、二条大宮の戦いで垣屋時忠は山名時煕を助けて討死した。時忠の子隆国は、応永年間(1394~1428年)に楽々前城を築いて、以後、垣屋宗家の居城となった。その後、山名氏は嘉吉の乱で没落した赤松氏に代わって播磨に勢力を伸ばしたが、応仁の乱の頃に赤松氏が再興されて播磨で復権すると、赤松政則やその重臣の浦上氏との間で激しい抗争が繰り広げられ、垣屋氏は山名氏の下で多くの犠牲を払った。その為、連年の戦いに疲れた山名政豊が但馬に撤収すると、多くの国人衆が山名氏に背き、守護の山名氏と守護代垣屋氏の対立も顕在化した。1499年に山名政豊が死に、致豊が跡を継いだが、既に昔日の守護権力は衰退し、守護代垣屋続成は山名氏を凌ぐ勢力となっていた。1505年には山名致豊は居城の此隅山城を垣屋続成に攻撃され、翌年、将軍足利義澄の調停で山名・垣屋両氏は和睦した。後に垣屋続成は足利将軍直参となり、更に勢威を強めた。1512年には、続成は鶴ヶ峰城を築いて居城を移したが、楽々前城は依然として一族の拠る要害として重視された。その後、山名氏の勢力は更に弱まり、但馬国内は垣屋氏・太田垣氏・八木氏・田結庄氏ら山名四天王が自立の動きを見せ、群雄割拠の状況となった。戦国後期になると、織田信長が勢力を伸ばし、その部将羽柴秀吉が中国平定に出陣すると、但馬の国人衆はその去就に大いに迷うこととなった。垣屋宗家の光成は織田方に付いたが、一族の一部は西の毛利方に付いて楽々前城に立て籠もって秀吉に抗戦し、攻められて落城した。その後の城の歴史は定かではないが、程なく廃城になったと考えられる。

 楽々前城は、山名四天王筆頭と言われる垣屋氏の本拠とされるだけあって、雄大な規模を持った長大な城である。本丸は標高300mの山頂にあるが、そこから北に長く伸びた尾根上に無数の曲輪群を展開し、その全長は800~900mにも及んでいる。大手はこの北尾根筋で、明確な登り口はないが、北端の斜面を数十m程直登すると間もなく段曲輪に行き当たる。ここから登城を始めるが、まず城域の北端近くにある中ノ丸にすら中々行き着かないほど多くの曲輪群で守られている。ネット上で事前に縄張図を入手していたが、縄張図に載っていない段曲輪も多数存在している。途中には多くの小堀切や土塁で囲まれた方形の曲輪などもあり、大手の守りはかなり厳重であったことが伺われる。ただ、曲輪群の脇をすり抜けるように登城道が敷設されて主郭まで延びており、城主専用の主郭直通ハイウェーの様な趣である。この城で圧巻なのはニノ郭周辺の遺構群で、ニノ郭西側にはこれでもかというぐらい執拗に大型の竪堀が連発している。しかも一部の竪堀はV字状に落とされ、その交差部に櫓台を設けて畝状竪堀の防御を完璧なものにしている。またニノ郭前面の堀切は、食い違い状に穿たれ、そこに架かる土橋は食い違いの堀切によってS字状に屈曲する巧みな構造となっている。ただ面白いことにニノ郭の東側には目立った防御構造は見られない。主郭の最前面の段曲輪には矢竹が群生しているが、ここで重大なアクシデントが発生し、押しのけた矢竹が跳ね返って顔面に当たり、片目のコンタクトを落としてしまったのである。藪の中なので、探したものの見つからず、主郭手前まで来て引き返すわけにも行かず、この後は片目で城を歩くことになってしまった。主郭部は、ニノ郭ほど技巧的な縄張りではなく、単に腰曲輪を幾重にも取り巻いた構造で、割りと平易である。主郭付近はあちこちに石が散乱し、石垣が築かれていたらしい。腰曲輪には低い石垣も見られるが、これは往時の遺構かどうかわからない。いずれにしても壮大な規模の山城で、遺構も完存し必見の城である。
北尾根曲輪群の堀切→DSC04500.JPG
DSC04514.JPG←土塁で囲まれた方形郭
S字状の土橋→DSC04531.JPG
DSC04613.JPG←主郭腰曲輪の石垣?

 お城評価(満点=五つ星):☆☆☆☆
 場所:http://maps.gsi.go.jp/#16/35.453696/134.742497/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1j0h0k0l0u0t0z0r0s0f1
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