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白倉城(群馬県甘楽町) [古城めぐり(群馬)]

IMG_7788.JPG←麻場城の空堀と復元木橋
 白倉城は、上野守護を兼帯した関東管領山内上杉氏の重臣であった白倉氏の居城である。白倉氏は、武蔵七党児玉党の流れを汲む国峰城主小幡氏の一族である。承久の乱で討死した白倉成季が、白倉氏の祖とされる。その後、小幡氏諸族と共に西上州に勢力を張り、小幡宗家と共に上州八家の一つにも数えられるほど発展した。戦国時代になると、関東管領山内上杉氏の四宿老として長尾氏・大石氏・小幡氏と共に白倉氏の名が挙げられており(『関八州古戦禄』)、小幡宗家とは独立した勢力として見做されていた様である。その後、山内上杉憲政が相模の北条氏康の攻勢によって越後に逐われ、これを庇護した越後の長尾景虎が憲政から山内上杉氏の名跡と関東管領職を譲り受けて上杉政虎(後の上杉謙信)となると、白倉道佐は政虎の側近として鶴岡八幡宮での管領就任式に随従した。甲斐の武田信玄が西上州の攻撃を開始すると、1563年に道佐は武田氏に服属した。しかし1582年、武田氏が織田信長に滅ぼされ、信長の重臣滝川一益が上野に入ると、白倉重家(道佐の子)は滝川氏に服従した。信長が本能寺で横死すると、北条氏直は神流川の戦いで滝川氏を破り、滝川氏は本領の伊勢へと落ち延び、西上州は北条氏の支配下に入った。重家は、神流川合戦で滝川方として戦ったが、戦後は北条氏に服属した。1590年の小田原の役の際には、重家は小田原城に立て籠もり、白倉城は弟・重高に守らせたが、前田利家を総大将とする北国勢に攻撃され、白倉城は落城した。そして北条氏滅亡後、白倉氏も没落した。

 白倉城は、この地の多くの崖端城と同じく、鏑川沿いの平野の南に連なる段丘群の一角に築かれている。麻場城・仁井屋城という離れて並立する2つの城で構成され、更に麻場城の南西麓に平時の居館を置いている。
 麻場城は、現在公園として復元整備されているので、遺構がわかりやすい。主郭の周囲を規模の大きな空堀で囲繞し、南側に土橋を架けて二ノ郭に接続している。主郭の北にも虎口があり、木橋が復元されている。主郭には土塁がないが、二ノ郭は、主郭との間の空堀沿いに数mの武者走りを設けて土塁が復元されている。主郭の土橋にはクランクして入るようになっているので、蔀土塁を兼ねた様なものだったのだろう。二ノ郭の西側には空堀が残っているが、南側にあったと思われる堀切は埋まっていてわからなくなっている。この辺は民有地のため、復元されていない。また主郭外周の堀の外側には土塁が廻らされ、北側には腰曲輪が張り出している。北東斜面には小郭があり、横堀が穿たれている。更に城の三方の斜面にも帯曲輪が築かれている。
 仁井屋城は、麻場城の東方500m程の位置にあり、ほとんどの部分が畑になっている。改変が多く、しかも畑以外の部分はガサ藪で縄張りはかなりわかりにくい。『日本城郭大系』の縄張図によれば、中央の主郭を中心に北・南・東に曲輪群を配置し、主郭の東側以外の周囲には空堀が廻らされていたらしい。主郭の西・北・東は切岸状の段差が確認できるが、空堀は現在では埋められていたり藪がひどくてほとんど確認不能である。その他、明確な遺構としては、東斜面の帯曲輪が確認できた。
 居館は民家になっており、石碑もあるらしいが、敷地の奥にあるらしく見ることができなかった。時間も日没間際だったので、訪問は諦めた。一応敷地の入口付近に「麻場城主居館跡」の表示があるので、日中に訪問すれば見せていただけそうな雰囲気ではあった。

 白倉城は以上の通りで、麻場城は復元整備の甲斐あって見応えがあるが、上州八家に数えられた有数の豪族の城にしては単純で、縄張りも規模も少々物足りない印象を受ける。
仁井屋城の主郭と切岸→IMG_7708.JPG

 お城評価(満点=五つ星):☆☆☆
 場所:【麻場城】http://maps.gsi.go.jp/#16/36.247483/138.942440/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1j0h0k0l0u0t0z0r0s0f1

    【仁井屋城】http://maps.gsi.go.jp/#16/36.247916/138.947783/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1j0h0k0l0u0t0z0r0s0f1

    【白倉氏居館】 http://maps.gsi.go.jp/#16/36.245147/138.940208/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1j0h0k0l0u0t0z0r0s0f1


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