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「アウシュビッツ」に見る連合国の偽善 [雑感]

 NHKで「アウシュビッツ」という5回放送のドキュメンタリーがあった。アウシュビッツとは言うまでもなく、ナチスドイツの行ったユダヤ人大量虐殺(ホロコースト)の最大の舞台となった絶滅収容所のことである。
 これほどの組織的かつ機械的な大量虐殺は、人類史上でも他に例を見ないことは周知の事実であるが、多くの普通の様に見受けられるドイツ人が多数、この虐殺に関わっていたことは衝撃的なことである。アウシュビッツだけで8千人の人員が囚人の監視や殺害に関与していたという。もちろん、何がそこで行われているか、十分知った上で。そして恐るべきことに、ここで働いていたドイツ人兵士達は、凄惨な戦闘の行われていた東部戦線から遠く離れたこの平和な地で、皆日々の生活を楽しみながら、毎日万単位の人間を殺戮し、ユダヤ人たちから没収した財産で私腹を肥やしていたのである。
 それだけでも恐ろしいことであるが、もう一つわかったのは、連合国側もかなり早い段階(1942年ごろという)からユダヤ人の組織的大量虐殺をナチスが行っているという情報を断片的にではあるが入手していたにも関らず、ほとんど有効な策を打つことなく放置していたということである。また1944年後半のドイツの敗色濃厚になった段階で、ユダヤ人団体からアウシュビッツへ通じる鉄道輸送網を爆撃するよう、イギリス・アメリカが要請されていたにも関らず、その作戦を実施することはなかったという。
 確かに、国際的な監視の目がきちんと機能していれば、情報伝達の遅い当時とはいえ、これほどの組織的大量虐殺が行えるわけがない。またドイツ以外にも、反ユダヤ主義を掲げてナチスのホロコーストに直接間接に協力した国は多いのである。
 今にして思えば、映画「ニュールンベルグ裁判」でマクシミリアン・シェル演じるドイツ側弁護士が、後半のクライマックスで、厳しく連合国側を指弾していたことは正当なことである。「本当に彼らはヒトラーやナチスの目的を知らなかったのか?そんなことはない、彼らは知っていたのに手を出さず黙認していたのだ」と。彼らはうすうすわかっていた。しかしユダヤ人に対する広い偏見が、彼らをして積極的な行動を起こさせなかった。そうした意味で、ホロコーストはドイツ人単独に犯罪ではなく、西洋社会全体の犯罪であったと言えるだろう。
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