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金丸城(石川県中能登町) [古城めぐり(石川)]

DSCN8430.JPG←主城部南東斜面の腰曲輪群
(2020年11月訪城)
 金丸城は、仏性山砦とも言い、将軍足利尊氏と弟直義が争った室町幕府の内訌「観応の擾乱」の際に歴史に現れる城である。元々この仏性山には天平寺と言う寺があり、多くの衆徒を擁して勢威を誇っていたと伝えられる。1350年11月4日、尊氏党であった能登守護桃井義盛は京都から能登に下向した。同月19日、直義党の桃井直信(元越中守護桃井直常の弟)は数千騎を率いて越中から能登に進攻し、高畠宿に陣を敷いた。以後、両軍は連日激しい戦闘を繰り広げ、12月13日に義盛は金丸城に籠城した。直信勢は金丸城を攻撃したが、城中から長野季光が打ち出して戦い、これを撃退した。1369年には桃井直常が能登に進攻し、得田章房・得江季員ら能登武士は能登守護吉見氏頼からの軍勢催促を受け、4月28日、鹿島郡の金丸城・能登部域に馳せ参じた。当時、両城は守護吉見氏の軍事拠点であり、金丸城に守護吉見氏頼が、能登部城に守護代吉見伊代入道が在城していた。章房らは両城の麾下にそれぞれ属して、連日桃井勢と合戦を繰返し、6月1日にこれを撃退したと言う(得田章房軍忠状・得江季員軍忠状)。時代は下って1557年、能登守護畠山氏の内紛「弘治の内乱」の際、温井・三宅反乱軍が金丸城に籠城した。七尾城方は金丸城を攻撃したが、撃退された。1580年には、織田方の長連龍と七尾城方の温井景隆・三宅長盛兄弟とが戦った菱脇合戦の舞台の一つとなった。連龍は福水城に本営を置き、鉢伏山砦を前線基地とした。一方、温井一党は金丸仏性山砦に陣営を置き、八代肥後・古浦屋新助が拠ったと言う。6月9日、邑知潟淵の菱脇で激戦が展開され、八代肥後以下の温井方将兵百数十余人が討死し、温井・三宅連合軍は敗北、仏性山砦は長氏方に攻められ落城したと言う。その後金丸城は史料に現れず、代わって徳丸城が現れるようになっているので、菱脇合戦から程なくして金丸城は廃城になったと推測されている。

 金丸城は、邑知地溝帯の北に連なる丘陵地帯の一角、標高120m、比高110mの仏性山に築かれている。この山は南麓から登山道がついている。南麓に能登生國玉比古神社があるが、そこから東に民家裏の車道を入り、60~70m程進んだところで北側に山中に入る道があるので、そこを入っていく。入って40m程で西側の尾根に登っていく道があるので、そこを登ると、尾根先端の平場に至る。ここも曲輪だったと思われ、そこから北に尾根筋を登っていけば、尾根途中の中段の曲輪を経由して主城部に至る。金丸城の主城部は、標高120mの最高所ではなく、そこから南に下った標高97mの峰を中心に築かれている。峰上に南北に長い狭小な主郭を置き、主郭には内枡形虎口がある。主郭下方の南尾根・南南東尾根・南東尾根に挟まれた南東の斜面上に7~8段の腰曲輪群を末広がりに築いている。南南東尾根の先には段曲輪があり、南東尾根の先にも舌状曲輪群が築かれ、その先端付近を二重堀切で分断している。一方、主郭の背後の小掘切を越えて北に伸びた細尾根の先に城内最高所となる物見台の小郭があり、背後に明確な堀切を穿って尾根筋を分断している。物見台から南東に伸びる尾根にも曲輪群が築かれている。途中、土橋状の尾根の側方に帯曲輪が付随する曲輪を経由して、下方に南東の出曲輪群が築かれている。ここには2本の堀切が穿たれているが、いずれも規模が比較的大きい。特に上の堀切では西側に竪堀が曲がりながら長く落ちている。南東出曲輪群の先端の平場からは、西斜面に竪堀が落ちている。
 以上が金丸城の遺構の状況で、やや薮が多く遺構が見辛い部分もあるものの、徳丸城と比べると求心性の強い縄張りで、支尾根に築かれた堀切の規模も大きい。縄張り的には徳丸城よりも優れていると考えられる。尚、主城部から独立して築かれた、物見台の南東出曲輪群は、主城部とは随分と築城思想が異なっているので、築城主体が違う可能性がある。主城部が南北朝期の縄張りをそのまま引き継いでいるのに対して、温井・三宅連合軍が金丸城を使用した際に新たに出曲輪群を築いたのかもしれない。
主郭→DSCN8420.JPG
DSCN8337.JPG←物見台背後の堀切
南東出曲輪群の二重堀切→DSCN8450.JPG

 お城評価(満点=五つ星):☆☆☆
 場所:【主郭】
    https://maps.gsi.go.jp/#16/36.952207/136.842409/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1j0h0k0l0u0t0z0r0s0m0f1
    【物見台】
    https://maps.gsi.go.jp/#16/36.953253/136.842967/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1j0h0k0l0u0t0z0r0s0m0f1


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