SSブログ

赤岩城(宮城県気仙沼市) [古城めぐり(宮城)]

IMG_1538.JPG←主郭と櫓台
 赤岩城は、気仙沼を本拠とした豪族、陸奥熊谷氏の居城である。熊谷氏と言えば、何と言っても一ノ谷の合戦で勇名を馳せた熊谷直実が有名だが、陸奥熊谷氏はその後裔である。即ち、源頼朝が奥州藤原氏を討ち滅ぼした奥州合戦の軍功により、直実の子直家は本良庄(南三陸地方)の地頭職を賜り、その子直宗は1223年に本吉・桃生の2郡を与えられて気仙沼に入部し、赤岩城を築いて居城とした。以後、陸奥熊谷氏宗家の歴代の居城となり、周辺各地に庶家を分封して勢力を拡大した。南北朝時代になると葛西氏の侵攻を受け、赤岩城に立て籠もってこれを度々撃退したが、勢力は漸減し、1363年、6代直政は遂に葛西氏に臣従した。以後は葛西氏の下で勢力の回復を図り、赤岩城周辺に月館城中楯長崎楯を築いて一族を分封した。1533年、赤岩城主12代熊谷直景が葛西氏に背任の疑いをかけられて攻め滅ぼされると、直景の弟で長崎楯城主の直光が、葛西氏から赤岩城の領地を与えられたが、これを機に熊谷一族内部で内紛が起こった。1574年4月、中楯城主熊谷上総直平が挙兵して赤岩城・長崎楯・月館城を攻撃した。葛西晴信は熊谷一族に命じて中館を攻撃させ、直平一族は大敗して自刃し、直平の子直勝は、気仙郡に敗走した。その後、長崎楯城主2代直正の子直房が中楯城主となった。1578年12月、今度は月館城主4代熊谷掃部直澄が挙兵し、本家の赤岩城主を凌ぐ勢力を有していた長崎楯城主熊谷直良と松川で合戦した。激戦の末に直良は討死し、40年以上も続いた熊谷氏の内紛は、月館城の勝利で終止符が打たれた。その後、1590年の小田原の役の際、主家の葛西氏が豊臣秀吉の元に参陣しなかった為、その後の奥州仕置で葛西氏は所領を没収されて没落し、熊谷氏も同様に所領を没収されて没落した。

 赤岩城は、松川川西岸の標高87m、比高67mの丘陵上に築かれた城である。城へは西麓から登道が整備されている。多数の段曲輪群で構成された大規模な城で、八幡神社が建てられた主郭を中心とした東郭群、その西側の丘陵上に展開する西郭群、更にその北側に谷戸を挟んだ尾根上に展開する北郭群に分かれている。西麓からの登道はかつての大手道と考えられ、左右を北郭群と西郭群に挟まれている。大手の谷戸にも平場群が広がっており、この辺りの構造は武蔵日尾城とよく似ている。北郭群は東郭群の北端から西に伸びる尾根上に一直線上に段曲輪を連ねている。先端の小郭は、大手道を睥睨する位置にあり、大手に進入する敵兵に対する防衛の櫓台となっていたと考えられる。北郭群と東郭群の接続点北側に搦手虎口があり、城域北端の堀切に城道が繋がっている。堀切手前にも段曲輪があって防御を固めている。東郭群は、中央の一番高い位置に主郭があり、櫓台跡と思われる高台に八幡神社がある。神社裏には塚があるので、元々宗教的な施設があったらしい。主郭の南に伸びる尾根に段曲輪が何段も続き、東郭群全体の側方にも綺麗に削平された腰曲輪が延々と伸びている。東郭群から北西に向かうと西郭群最上部の平場に至り、ここには城内で最も広い平場が広がっている。実質的な二ノ郭だったものだろう。二ノ郭は2段の平場に分かれ、背後と南端部に土塁を築いている。外周は腰曲輪を何段にも廻らし、二ノ郭から派生する西尾根と南尾根にそれぞれ段曲輪群を築いている。西尾根の曲輪群は、北郭群と大手道を挟んでいる。一方、南尾根の曲輪群は、ニノ郭先端の小堀切の先に一直線に段曲輪を連ねている。ニノ郭(西郭群)と東郭群の接続点には大手道が繋がっている。ここから大手の谷戸に降っていくと、谷戸の大手道が東郭群に突き当たる場所に、小規模な大手虎口が築かれている。

 赤岩城は、堀切は殆ど無いが、多数の段曲輪・腰曲輪が綺麗に削平され、しかもそれぞれの曲輪に至る動線もはっきりと確認でき、往時そのままの姿を留めている。しかも城域の殆どは綺麗に整備されて藪が少なく歩きやすい(一部の例外はあるが)。『日本城郭大系』や現地解説板の縄張図に記載されていない腰曲輪も多数あり、北郭群に至ってはほとんどまともに記載されていないほど、城域が広いということなのだろう。小豪族の城で大したことないだろうと高を括っていたが、見事に裏切られた。嬉しい誤算である。
大手道から見た北郭群→IMG_1485.JPG
IMG_1510.JPG←城域北端の堀切
西郭群の腰曲輪→IMG_1568.JPG
IMG_1609.JPG←西郭群の南尾根の段曲輪
 お城評価(満点=五つ星):☆☆☆☆
 場所:https://maps.gsi.go.jp/?ll=38.916548,141.550791&z=16&base=std&vs=c1j0l0u0
nice!(6)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

nice! 6

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

Facebook コメント