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山吹城(長野県下諏訪町) [古城めぐり(長野)]

DSCN4547.JPG←大城の主郭土塁
 山吹城は、諏訪大社下社の大祝であった金刺氏の詰城と考えられている。金刺氏の居城は、下社秋宮背後に築かれた桜城とされ、有事の際の詰城として山吹城が築かれたと推測されている。山吹城は、後方の大城と前方の小城の2つがあるが、それぞれの築城時期は定かではない。金刺氏は、南北朝期以来、中先代の乱・桔梗ヶ原の合戦・大塔合戦などの抗争を経て、諏訪大社上社の大祝であった諏訪氏との間で対立を深めていった。1449年、遂に上社と下社は武力衝突し、上社勢が下社を攻め、社殿を焼き払う結果となった。その後も両者の対立は続いたが、概ね下社の劣勢であり、衰退の一途を辿った。1483年の上社諏訪氏の惣領家と大祝家との内訌の時には、金刺遠江守興春は大祝継満に味方して挙兵し、上社領を攻撃した。上社勢は桑原氏らが高鳥屋城(桑原城)から討って出て、湯の脇の合戦でこれを討ち破り、興春を討取り、その首を大熊城に2夜晒したと言う。上社勢はそのまま下社に討ち入り、社殿を焼き払った。後に上社の分裂内訌は諏訪頼満によって統一され、1518年、頼満は金刺昌春が籠城していた萩倉の要害を攻撃した。萩倉要害は自落し、金刺氏は断絶、没落したと言う。この萩倉要害が、山吹城の大城のことと推測されている。

 山吹城は、前述の通り、大城と小城の2つがある。諏訪大社下社春宮の北方の山上にあり、前方の小城は標高940mに、後方の大城は標高1020mの峰に築かれている。清掃センター付近から両城までの登道が整備されており、誘導標識もあるので迷うことなく行くことができる。
小城の主郭背後の堀切→DSCN4412.JPG
 小城は、主郭・二ノ郭・三ノ郭が一直線に並んだ連郭式の城で、それぞれの曲輪は堀切で分断され、主郭背後にも城内最大の堀切が穿たれている。主郭は前面と後部に土塁を築いているが、郭内は削平が甘く傾斜している。また西側に腰曲輪を築いている。二ノ郭は細長い曲輪で、特に特徴はない。三ノ郭は円丘を何段かの平場に造成しているが、切岸が余りはっきりせず、平場内も傾斜しているので、全体の構造がわかりにくい。三ノ郭下方の南尾根に小堀切がある。
DSCN4439.JPG←小城の三ノ郭の堀切

大城の竪堀状虎口→DSCN4580.JPG
 大城は、小城のある尾根から沢を越えた西の峰にある。中心部はY字型に曲輪が配置されている。主尾根には主郭と二ノ郭が南北に並んでいる。主郭は土塁で四周を囲んだ横長長方形の小さな曲輪である。その北に浅い堀切を挟んで縦長長方形の二ノ郭が置かれている。主郭の南東には東曲輪が、南西には西曲輪が突き出すように築かれている。これらの曲輪の外周には何段もの腰曲輪が築かれており、特に西曲輪周辺には多数の腰曲輪群が築かれている。二ノ郭の北西には弓形になった尾根に沿って繋ぎの曲輪と北曲輪、更にその先に堀切を挟んで出曲輪が築かれている。繋ぎの曲輪の付け根北側には、竪堀状の虎口が築かれ、虎口を防御する土塁が築かれている。この虎口に繋がる城道は二ノ郭北側の腰曲輪に通じ、この腰曲輪の北東部には土塁が築かれ、二ノ郭との間に城内通路を兼ねた堀切を形成している。土塁の北には竪堀が穿たれ、長く東の谷に向かって落ちている。現在はこの竪堀のところに登山道が整備されている。また繋ぎの曲輪の北側には枡形虎口が形成され、仕切り土塁が残っている。出曲輪の北斜面には4段程の腰曲輪が築かれ、最下部を堀切で穿ち、腰曲輪群の東の平場に湧水が残る水の手がある。以上が大城の主要部であるが、出曲輪の南西の尾根筋にはずーっと下まで平場群が続いている。しかし『信濃の山城と館』では、「かつて全山工作されていたため、(中略)削平地が広範囲にわたっているので、城域の特定は難しい」とし、出曲輪の先は遺構とは認定していない。ただ途中には堀切のような地形もあり、舌状にきれいに削平された平地もあり、遺構と考えてもおかしくないようなところもある。気になるのは、この南西尾根の平場群にだけ一部に石積みが残っており、遺構であるならば何故ここにだけ石積みがあるのか、謎もある。
 以上が山吹城の遺構で、薮払いされているので遺構が見やすく、見応えがある。
DSCN4592.JPG←大城の出曲輪の堀切

 お城評価(満点=五つ星):☆☆☆
 場所:【小城】
    https://maps.gsi.go.jp/#16/36.088063/138.088059/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1g1j0h0k0l0u0t0z0r0s0m0f1
    【大城】
    https://maps.gsi.go.jp/#16/36.091029/138.090420/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1g1j0h0k0l0u0t0z0r0s0m0f1


信濃の山城と館〈第6巻〉諏訪・下伊那編―縄張図・断面図・鳥瞰図で見る

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  • 作者: 宮坂 武男
  • 出版社/メーカー: 戎光祥出版
  • 発売日: 2013/08/01
  • メディア: 単行本


タグ:中世山城
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