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宮崎城(宮城県加美町) [古城めぐり(宮城)]

DSCN1844.JPG←高低差の大きい腰曲輪群
(2020年2月訪城)
 宮崎城は、葛西大崎一揆の時に激戦の地となった城である。大崎氏の重臣笠原氏歴代の居城であった。笠原氏は元々信州伊那郡笠原庄の出で、鎌倉幕府滅亡後に信濃守護小笠原貞宗、次いで足利一門の斯波高経の家臣となり、1336年には高経の弟家兼の家臣となった。家兼が1354年に将軍足利尊氏から奥州管領(後の奥州探題)に任ぜられて奥州に下向すると、笠原氏の祖近江守重広もこれに従って大崎に下向し、1359年に宮崎に封じられて宮崎城を築き、以後9代民部少輔隆親・10代隆重まで230年余りに渡ってこの地を支配した。笠原氏は宮崎城の他に、高根城に笠原内記、大楯城に笠原七郎など、周辺に城砦群を築き、一族を配してこの一帯に蟠踞していた。1536年の大崎氏の内訌の際には、笠原氏は古川氏方に付いて伊達稙宗に抵抗しており、反伊達勢力の一員であった。1590年の豊臣秀吉による奥州仕置で大崎氏は葛西氏と共に改易となったが、その旧領を与えられた秀吉の家臣木村吉清・清久父子は、統治能力の欠如から圧政を敷き、同年10月、葛西・大崎両氏の旧臣たちは葛西大崎一揆と呼ばれる大規模な叛乱を起こした。しかしその裏には、失地回復を目論む伊達政宗の煽動があったとされる。それが露見しかかって秀吉への釈明に追われた政宗は、許されて秀吉の命で一揆鎮圧に向かった。翌91年旧暦6月24・25日、宮崎城に籠城した旧城主笠原民部少輔隆親を大将とした笠原党2000人余りと、攻め寄せる伊達軍24000人余りが激戦を展開した。この戦いで、伊達勢は智将浜田伊豆景隆ら20名ほどの武将が討死するなど大損害を受けたが、2日間の激戦の末に宮崎城を落城させた。隆親は一子隆元と数人の家来に守られて出羽に逃れたが、捕らえられた将兵200人余りは城の北側の「流れの沢」で斬首されたと言う。一揆鎮圧後、この地は伊達領となり、文禄より慶長の初め頃まで宮崎城は片平親綱・山岡志摩重長・石母田宗頼の3人が交代で管理していたと伝えられる。その後、牧野大蔵盛仲・茂仲が50年余り支配した後、1652年に石母田氏6代永頼が岩ヶ崎所から宮崎に移封となった。永頼は6年間宮崎城に在館したが手狭であったため、1658年に宮崎館を築いて移り住み、宮崎城は廃城となったと推測される。

 宮崎城は、標高140m、比高60m程の山稜南東端に築かれている。山麓には田川とその支流鳥川が流れて天然の外堀となり、山稜も傾斜のきつい要害性の高い地勢である。城址北側に車道が通っており、標柱・解説板が立っていて、そこから城内に入ることができる。中心に堀切で区画された主郭とニノ郭があり、その南北の斜面に腰曲輪を幾重にも築いている。主郭は背後に土塁を築き、この土塁はそのまま北に伸びて、北尾根東西の腰曲輪群を区画している。主郭は東側に前郭を置き、その先に浅い堀切があって、ニノ郭の切岸がそびえている。また主郭の南西角から南に伸びる尾根に段曲輪群が築かれている。下に行くほど末広がりに広くなり、最下段の西側には大手虎口がある。また南端は大堀切となっているが、嘉門坂と呼ばれる登路があったらしい。堀切の南は出曲輪で、角崎の名があるが、現在は牛が飼われている。この大手筋の西側の平地には堀跡と土塁が残っている。宮崎城の南斜面にはかなりの広さを持った腰曲輪が築かれているが、二筋の谷が深く入り込み、この谷を侵入してきた敵兵に対して両翼の腰曲輪群から攻撃できるようになっており、殺気を感じる緊張感のある縄張りである。二ノ郭の南側の腰曲輪群は切岸が大きく、かなりの高低差を持って段々に築かれている。この他、二ノ郭北の腰曲輪から北東には、絶壁上に細尾根が伸びて物見台が置かれ、主郭西側の腰曲輪から繋がる西尾根にも小堀切があり、その先は物見台となっていた様である。
城の中心になる曲輪はそれほど大きなものではないが、堅固な地勢に築かれた高低差の大きい縄張りで、多くの腰曲輪で防御され、かなり守りが固かったと推測される。中心部がコンパクトに纏められた、非常に求心性の高い縄張りで、さすがは伊達軍が苦戦しただけのことはある城である。
主郭背後の土塁→DSCN1917.JPG
DSCN1878.JPG←主郭~二ノ郭間の堀切
南尾根の腰曲輪群南端の大堀切→DSCN1755.JPG
DSCN1776.JPG←大手虎口

 お城評価(満点=五つ星):☆☆☆☆
 場所:https://maps.gsi.go.jp/#16/38.622772/140.760280/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1j0h0k0l0u0t0z0r0s0m0f1


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